2019 年 51 巻 4 号 p. 400-406
背景:経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)は,重症大動脈弁狭窄症の治療として,超高齢者や外科的手術のハイリスク症例に広く行われるようになった.TAVIは薬物療法と比較し生命予後を改善させるが,術後に日常生活動作(ADL)評価や手段的日常生活動作(IADL)が低下する症例がみられる.
目的:TAVI術後のADLとIADLの変化を調査し,術後ADLとIADLの変化に関連する因子を検討する.
対象・方法:2015年6月から2017年10月までにTAVI術前と術後外来1カ月時に評価を施行した68例(平均年齢85±4歳,女性50名)を対象とした.術前と外来時のADLの評価にはKatz Indexを用い,IADLの評価にはFAI(Frenchay Activities Index)を用いて比較を行った.また術後IADL変化に関連する術前因子に関して検討を行い,有意差がみられた項目をロジスティック回帰分析で多変量解析を行った.
結果:手術前後でKatz Indexに低下は認められなかったが,FAIは有意に低下していた.FAI低下に関わる因子として,年齢や併存疾患,Frailty,認知機能には差がみられなかったが,大動脈弁最高血流速度,平均圧較差,僧帽弁閉鎖不全(MR)の重症度,三尖弁収縮期圧較差(TRPG)が有意に高値であった.多変量解析では大動脈弁最高血流速度とMRの重症度がFAI低下の独立因子であった.
結語:TAVI術後,ADLは維持しているが,IADLは低下していた.術前の大動脈弁最高血流速度が速く,MRがより重症である患者は術後にIADLが改善しない可能性が示唆された.