心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
[臨床研究]
歯科治療における感染性心内膜炎予防のための抗生剤投与の現況
~歯科医に対するアンケート調査の結果~
尾本 正青木 淳丸田 一人益田 智章堀川 優衣岡松 良昌弘中 祥司
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 51 巻 9 号 p. 914-919

詳細
抄録

 背景と目的:歯科治療時における感染性心内膜炎発症予防のための抗生剤使用状況についてはあまり報告がない.本研究の目的は,歯科医の実臨床における予防的抗生剤投与の適応とその内容についての現状を調査し,ガイドラインの影響を検討することである.

 方法:昭和大学関連歯科病院,地域連携歯科医院を対象に,以下の5つの設問につきアンケート調査を行った.1)所属(a.歯科病院,b.歯科医院),2)経験年数,3)どのような歯科治療時に予防的抗生剤を投与するか(a.非侵襲性治療,b.侵襲性治療),4)患者背景(a.人工弁使用患者,b.心臓弁膜症患者),5)抗生剤の内容.

 結果:70名に配布し,回答者は43名(回答率61%)で,歯科病院は20名,歯科医院は23名であった.平均経験年数は20.7±12.5年(1-19年:30%,20-29年:33%,30年以上:37%)であった.93%(38/41)が侵襲性治療時に,非侵襲性治療時では7%(3/41)が予防的抗生剤投与を行うと回答した.予防対象患者が人工弁使用だけである歯科医は71%(27/38)で,人工弁使用に加え心臓弁膜症患者も対象としている歯科医は29%(11/38)であった.また,アモキシリンを第一選択としていた歯科医が77%(30/39),セフェム系である歯科医が18%(7/39)であった.

 結論:今回の調査において,ガイドラインでは推奨されていない非侵襲性歯科治療における抗生剤使用は7%に過ぎず,また,高度リスク群とされる人工弁患者に対しては100%の歯科医が予防的抗生剤投与を行っており,ガイドラインの趣旨が日常歯科診療に反映されていることがわかった.また,ガイドライン上推奨されているアモキシリンの使用頻度は77%であったが,歯科医院における使用頻度は61%といまだ十分とはいえず,今後とも関連学会や研究会を通じて啓蒙活動を推し進める必要がある.

著者関連情報
© 2019 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top