心臓
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[症例]
心室内異常構造物の鑑別に各種モダリティを用いた低左心機能の1例
橋本 昌樹荻本 理紗本田 圭大森 康歳石原 有希子鴨井 祥郎山本 博之田中 茂博
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2020 年 52 巻 1 号 p. 54-60

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抄録

 症例は55歳,男性.左下肢壊疽に対して45歳時に左下肢切断術の既往がある.50歳時に健診での心電図異常を契機に経胸壁心エコー,心臓CTを施行された.前壁中隔の壁運動高度低下に加え左前下行枝#7の閉塞,右冠動脈#1の中等度狭窄を認めていた.その後通院を自己中断し以降の精査は未施行であった.55歳時に腰部・右下肢の疼痛としびれを主訴に当院へ搬送,右下肢壊疽の診断で大腿切断の予定となった.術前の胸部X線で心陰影拡大と胸水貯留を認め,また経胸壁心エコーでは左室のびまん性壁運動低下に加え左室心尖部に弧状の,可動性を有する異常構造物を認めた.下肢に対する手術施行は高リスクであると判断,保存的加療の方針となり,各種モダリティを用いて心室内異常構造物の精査を行う方針とした.心臓MRIでは前壁中隔から心尖部にかけて遅延造影を認めた.また,同部位で心内膜に沿った造影不良域を認めた.入院第36病日に施行した経胸壁心エコーでは心室内異常構造物は縮小,可動性も消失していた.上記結果より,陳旧性心筋梗塞による左室壁運動の高度低下,それに伴う心室内血栓の形成と考えた.心室内血栓検出に関しては低侵襲性から経胸壁心エコーが,感度・特異度の観点から心臓MRIが推奨される.比較的珍しい形状の心室内構造物に対して各種モダリティを用いて,経時的な画像所見の変化も併せて心室内血栓であると最終的に判断できた1例であった.

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