2020 年 52 巻 10 号 p. 1163-1168
症例は81歳女性.既往歴に2型糖尿病と脳梗塞がある.X年,CTで心臓腫瘍が疑われ当院受診.UCG,CT,MRIにて僧帽弁輪部から房室間溝に沿って広がる径36 mmの石灰化腫瘤がみられ,骨シンチで骨化形成反応を認めた.外科的切除は困難であった.その後腫瘤は増大し,X+5年に僧帽弁狭窄兼閉鎖不全が出現,X+9年に急性心不全をきたした.X+10年,誤嚥性肺炎にて死亡.剖検にて心臓腫瘤は,60×60 mm大で表面は骨化し,乾酪変性様内容物を認めcalcified amorphous tumor(CAT)と診断された.
CATは稀な非腫瘍性石灰化腫瘤であり,主に径20 mm以下の大きさで末期腎不全透析患者に発症する.本症例は初診時,径36 mmと大きく腎機能も正常で従来の報告と異なっており,かつ10年間進行過程を観察しえた極めて稀な症例と考えられた.