心臓
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[臨床研究]
下肢静脈超音波検査で検出した悪性腫瘍を合併した下肢深部静脈血栓症の臨床的検討
宮内 綾子神田 順二高根 晴美船渡川 勝康岩井 利恵
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2020 年 52 巻 11 号 p. 1254-1261

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抄録

 目的:悪性腫瘍を合併した下肢深部静脈血栓症(deep vein thrombosis;DVT)の臨床的特徴を解析すること.

 対象・方法:2015年1月~2017年12月に下肢静脈超音波検査にて,新規にDVTと診断された208例中,悪性腫瘍を合併した63例(男24例/女39例,平均年齢68.7歳)の,(1)患者背景,(2)DVT発症の特徴,(3)DVT発症後の経過と生命予後について検討.

 結果:(1)腫瘍臓器別では,婦人科がん(卵巣,子宮がん)18例,胃がん13例,肺がん・血液系がん各5例,膵がん4例,他18例.臨床病期は,進行がんが50例と全体の79%を占め,次いで早期がん8例(13%),手術後5例(8%)であった.悪性腫瘍治療内容は,化学療法施行例を34例(54%)と高率に認めた.(2)DVT発症部位は,近位型血栓と遠位型血栓ともに半数であり,全体の23例(36%)に肺血栓塞栓症を発症していた.DVT発症時期は,悪性腫瘍診断時(0カ月)より,先行した例を含め−2.5~99カ月(中央値2カ月).悪性腫瘍診断前後6カ月以内の発症が37例(64%)と高率であり,そのうち12例(21%)はDVT発症と悪性腫瘍診断が同時であった.(3)抗凝固療法は54例(86%)に施行された.追跡期間中に死亡が35例(56%)にみられ,DVT発症から死亡までの期間は0.5~22カ月(中央値2カ月),6カ月以内の死亡は28例(全死亡の80%)とDVT発症後の予後は極めて不良であった.

 結論:悪性腫瘍合併DVTは,進行がんや化学療法中でリスクが高くDVT発症後の生命予後は不良であった.悪性腫瘍診断時を含め診断後早期よりDVT発症を認めていることから,悪性腫瘍患者では早期よりDVT発症を念頭においた検査・診療が重要と考えられる.

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