2020 年 52 巻 11 号 p. 1264-1272
背景:時間外入院(夜間,週末,祝日)のST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者は時間内入院と比較して臨床転帰が不良であることが知られている.時間外の循環器内科医の診療体制(院外待機もしくは院内当直)がSTEMI患者の臨床転帰に影響を及ぼすかどうかは検討されていない.宮崎県立延岡病院(当院)では,週の半分は循環器内科医が院外待機を行い,残りの半分は院内当直を行っているため,時間外の循環器内科医の診療体制とSTEMI患者の臨床転帰について検討を行った.
方法:2013年から2017年の期間で当院を時間外に受診し,STEMIの診断で経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行され,冠動脈ステントを留置された連続症例194人の検討を行った.臨床転帰は院内死亡に加え,主要心血管イベント(MACE:心血管死,非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中,ステント血栓症,再血行再建術,不安定狭心症による入院,心不全による再入院)とし,中央値11カ月の観察を行った.
結果:患者を時間外の循環器内科医の診療体制に従って院外待機群(n=93)と院内当直群(n=101)の2群に分けた.両群間で受診から再灌流までの時間(p=0.775),最大CK(p=0.783),院内死亡率(p=0.865)は同等であった.Kaplan-Meier曲線では両群間のMACEの発生率は同等で(p=0.901),多変量Cox回帰分析では,循環器内科医の診療体制はMACEの規定因子ではなかった(p=0.813).
結論:当院の時間外診療において,循環器内科医の診療体制はSTEMI患者の臨床転帰に影響を与えなかった.