心臓
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[症例]
Becker型筋ジストロフィーの左室緻密化障害所見を呈した心筋症の1例
小田 敏雅松永 正紀中野 秀林 和沙水野 侯人佐藤 照盛
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2021 年 53 巻 1 号 p. 61-68

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抄録

 42歳,男性.主訴は咳嗽と下腿浮腫.約1カ月前から頻回の咳嗽を認め,その後に下腿浮腫も出現したため当科を受診した.心臓超音波検査では左室壁運動はびまん性に高度低下し,左室駆出率は21.7%と拡張型心筋症様の所見であった.さらに心尖部・下壁から後側壁にかけて左室壁緻密層の菲薄化,心内膜側の肉柱構造を認め,左室緻密化障害の所見を伴っていた.心臓MRI検査では左室後壁基部を中心にガドリニウム遅延造影,心尖部から左室自由壁を中心とした左室緻密化障害を認めた.詳細な問診からは弟が筋ジストロフィーと過去に診断されていたことが判明し,血液検査にてCK上昇を認めたことから心不全治療を行うとともに,心筋生検や遺伝子検査を行いBecker型筋ジストロフィーに伴う心筋症と診断した.Becker型筋ジストロフィーはジストロフィン遺伝子変異が原因のX連鎖潜性の遺伝性筋疾患であり,心不全が予後を左右する重要な因子である.本症例のように左室緻密化障害の所見を伴う例は予後が悪いと報告されており,内服治療を継続するとともに慎重な経過観察が必要である.

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