2021 年 53 巻 1 号 p. 88-94
58歳女性.5日前から労作に関係なく胸部圧迫感を自覚し当院循環器内科を受診した.不安定狭心症を疑われ緊急カテーテル検査を施行し#2に50%狭窄を認め,狭窄直後から#3末梢にかけて紡錘状の狭窄後拡張を認めるものの,その他に有意狭窄を認めず不安定狭心症は否定的と判断した.翌朝に胸痛および下壁誘導でST上昇を認め,心室細動に至った.再度緊急カテーテル検査を施行したところ#2の50%狭窄部位から末梢に多量の透亮像を認め#3で100%閉塞していた.同部位に血栓吸引を行い多量の赤色血栓が吸引された.血栓吸引のみで透亮像は消失しTIMIⅢを達成した.抗凝固療法と血管拡張薬による治療を行い,第14病日に冠動脈造影検査を再検したが血栓の再発を認めなかった.光干渉断層診断および血管内視鏡検査での観察範囲内に血管内膜にプラーク破綻や冠動脈解離を認めなかったことから冠攣縮により血栓が形成されたと診断した.冠攣縮性狭心症はしばしば急性心筋梗塞の原因となる.今回我々は初期対応に遅れをとり急性心筋梗塞に至った冠攣縮性狭心症の症例を経験したためここに報告する.