心臓
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[症例]
大動脈ステントグラフト挿入術後に大動脈食道瘻を合併した1剖検例
馬渡 耕史光永 顕彰春田 弘昭常森 将史中野 治那須 拓馬山本 裕之
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2021 年 53 巻 12 号 p. 1323-1331

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抄録

 胸部大動脈ステントグラフト(SG)挿入術(TEVAR)後の大動脈食道瘻を経験した.症例は81歳女性で嚥下時の胸部違和感のため受診.胸部X線写真と胸部CT検査で,胸部大動脈瘤(77×40 mm)を認め,食道造影と上部消化管内視鏡検査で,胸部大動脈瘤による食道圧排の所見を認めた.翌月胸部大動脈瘤に対してTEVARが施行された.術後順調にリハビリテーションが進み,胸部CTでも動脈瘤の退縮を認めたが,術後68日より39℃台の発熱が出現した.胸部CTでSG留置部周囲の大動脈壁の肥厚と低CT値所見を認めた.

 以上より発熱はSG感染によると診断し,大動脈置換術の適応と判断したが,侵襲が大きいため内科的治療が選択された.抗菌薬で一旦解熱したが,CRP 22.4 mg/dLと炎症反応の上昇に加え,貧血の進行と黒色便を認めたため内視鏡検査を施行し食道の穿通性潰瘍を認めた.

 術後103日ショックとなり永眠され剖検が行われた.剖検所見では,穿通性の食道潰瘍が4カ所認められ,潰瘍底には大動脈SGが露出しており,胸部大動脈食道瘻が形成されていた.取り出したSG自体は問題なかったが,内膜の損傷によりハードプラークが破壊されソフトプラークが露出し,高度の炎症細胞浸潤を認めた.炎症は中膜や外膜にも波及していた.SG挿入に伴う内膜損傷による高度の炎症が大動脈壁の脆弱化をもたらし,瘤の退縮が,結果的に食道壁を牽引するような形になり,SGの外方への圧力が加わって大動脈壁の部分的な欠損に至ったと考えられた.

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