心臓
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[症例]
弓部大動脈破裂に対するTEVAR後約5カ月で下行大動脈へ化膿性炎症が波及し大動脈食道瘻をきたした1剖検例
八重樫 貴紀中野 学村田 義治
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2021 年 53 巻 3 号 p. 293-300

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抄録

 80歳代男性.糖尿病・高血圧症にて当院内科通院中.2年前に早期胃癌に対し開腹手術,3カ月前に右視床出血の既往あり.自宅で急に倒れたため当院へ搬送.弓部大動脈破裂の診断にて近医心臓血管外科へ転院のうえで緊急で胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR)施行.第31-91病日まで当院転院のうえで回復期リハビリテーションを行い,自宅退院となった.第104病日,尿閉となり,長期尿バルーン留置の方針となった.第142病日,定期尿バルーン交換時にCRP 15 mg/dLと上昇,CTにてグラフト遠位端の胸部下行大動脈周囲に3 cm程の膿瘍形成を認めた.エンピリックな広域抗生剤を使用するも,第149病日に吐血の後に永眠された.病理解剖の結果,化膿性の胸部下行大動脈炎による食道瘻ならびに胸腔内出血の所見を認めた.

 弓部大動脈破裂に対するステントグラフト留置術から5カ月弱で出現したグラフト感染を契機に再破裂・食道瘻をきたした1剖検例を経験したので報告する.

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