心臓
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53 巻, 3 号
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OpenHEART
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川崎病−最近の進歩− 企画:住友直方(埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科)
HEART’s Column デジタル循環器学 Digital Cardiology
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[臨床研究]
  • 中島 充貴, 櫻木 悟, 河口 達登, 斎藤 宇亮, 飯田 倫公, 山田 隆史, 小出 祐嗣, 和田 匡史, 川本 健治, 田中屋 真智子, ...
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 53 巻 3 号 p. 259-264
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2022/03/28
    ジャーナル フリー

     背景:Fibrosis-4(FIB4) indexは肝線維化を評価する指標で,年齢・血小板数・AST・ALTにより簡便に算出される.FIB4 indexは心不全症例における予後と関連するとの報告もある.本研究では,急性心不全入院中のFIB4 indexの推移,およびFIB4 indexの変化に関係する因子について検討した.

     方法・結果:対象は,2011年3月から2019年2月の期間に急性心不全で当院に入院し,入院時と退院前に右心カテーテル検査を施行した31例.右心カテーテル施行日の2日以内の血液検査からFIB4 indexを算出した.入院時から退院前にかけて,FIB4 indexは有意に低下した(2.79(1.83,4.74) to 2.46(1.40,4.21),p=0.012).単変量解析では,総ビリルビンの変化,NT-proBNP変化および右房圧変化がFIB4 index変化と関係していたが,多変量解析では,右房圧の変化がFIB4 indexの変化と有意に関係していた(β=0.027,CI:0.003 to 0.052,p=0.032).

     結語:急性心不全において,経過中にFIB4 indexは低下した.FIB4 indexの変化には右房圧の変化が関係していた.

Editorial Comment
[症例]
  • 中村 蓉子, 石井 卓, 松村 雄, 渡邉 友博, 細川 奨, 渡部 誠一
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 3 号 p. 266-270
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2022/03/28
    ジャーナル フリー

     症例は4歳時に罹患した川崎病により巨大冠動脈瘤を有する20代男性.急性期治療に免疫グロブリン療法を2回施行したが,発熱は14日間続き心筋炎も合併した.急性期の冠動脈病変は右冠動脈(RCA)中央部と左前下行枝(LAD)近位部にみられ,経過中にLAD瘤内に壁在血栓を疑う所見があり血栓溶解療法を施行した.罹患後1年の冠動脈造影ではLADの拡張は退縮したが,RCAは瘤が残存した.以後3年おきに造影CT検査を施行し,RCAの瘤は最大径10 mm前後の巨大冠動脈瘤となり全周性に石灰化を認めていた.このため,発症後遠隔期においてもアスピリンおよびワルファリンカリウムをPT-INR:2.0-2.5を目標値として継続していた.19歳までの心エコー検査,心電図による定期検査では虚血所見を認めなかったが,20歳時の心電図検査で・誘導とaVF誘導に陰性T波を認めた.心エコー検査では左室心尖部に壁運動低下を認め,心臓MRI検査では同部位の遅延造影が陽性であった.右冠動脈造影ではRCA中央部の瘤内に全周性の石灰化を認めたが内部の有意狭窄は認めず,末梢の描出も良好であった.左室造影ではRCA後下行枝領域(左室下壁)の壁運動低下を認めたが,駆出率は75.6%と保たれていた.再疎通を伴う左室下壁の無症候性心筋梗塞と診断し,抗凝固療法を強化し保存的に経過観察する方針となった.川崎病性巨大冠動脈瘤では抗凝固療法下においても遠隔期に心筋梗塞を生じるリスクを念頭におく必要があり,禁煙などの生活指導も含めた包括的管理も重要である.

Editorial Comment
[症例]
  • 田尾 克生, 廣野 恵一, 畑 由紀子, 西田 尚樹, 新井田 要
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 3 号 p. 275-279
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2022/03/28
    ジャーナル フリー

     Noonan症候群は,特徴的外表異常と低身長,先天性心疾患,心筋症,発達遅滞などを伴う先天異常症候群であり,80%以上の症例で心疾患が合併する.心筋症として肥大型心筋症の合併が多く報告されており,その発症様式,時期,経過などは多様性がある.今回,異なる遺伝学的背景をもつNoonan症候群に伴う肥大型心筋症の小児例を2例経験した.

     症例1は出生時,胎児水腫を呈した臨床的Noonan症候群で,幼児期に肥大型心筋症を発症した.肥厚所見が左室全体にわたり認められたが,遺伝子解析では疾患責任遺伝子変異は特定できなかった.

     症例2は遺伝子解析でSOS1の病的変異からNoonan症候群と確定診断され,同時にMYH7にも病的変異を認めた.左室の求心性肥大は新生児期より目立った悪化はなく持続している.

     2症例ともに無症状で,突然死のリスク因子もないことから無治療での慎重な経過観察を行っている.2症例に共通して早期に求心性心筋肥大が進行する特徴的な臨床像が認められたが,遺伝子解析からは遺伝的異質性が示唆された.

  • 山口 航平, 岩﨑 康展, 吉田 剛, 伊藤 英一, 田辺 恭彦, 榎本 貴士, 竹久保 賢, 島田 晃治
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 3 号 p. 280-284
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2022/03/28
    ジャーナル フリー

     症例は60歳,男性.幼少期から心室中隔欠損症を指摘されていた.歯科治療後1カ月間持続する発熱を主訴に受診し,大動脈弁の疣贅を指摘され感染性心内膜炎の診断で入院となった.血液培養から連鎖球菌が検出され,6週間の抗菌薬治療で治癒に至った.退院後徐々に倦怠感が出現し,心拡大の増強やBNP上昇をきたし,経食道心エコーでは既知の心室中隔欠損に加えて大動脈右室瘻を認めた.カテーテル検査でQp/Qs=2.5であり,手術方針となった.術中所見では,大動脈弁は二尖で無冠尖に穿孔があり,バルサルバ洞は瘤化していないが右冠尖に右室と交通する瘻孔を認めた.欠損孔・瘻孔の閉鎖と大動脈弁置換術を施行後,経過良好である.本例は細菌感染により脆弱になったバルサルバ洞が右室へ穿破し大動脈右室瘻を形成したものと考えられた.感染性心内膜炎による大動脈右室瘻に対して外科的修復術を行った報告は少なく,文献的考察と併せて報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 谷保 康一, 雨森 健太郎, 松本 雄二, 芦澤 直人
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 3 号 p. 286-290
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2022/03/28
    ジャーナル フリー

     症例は91歳男性.慢性心房細動に対して,チクロピジンおよびバイアスピリンを内服中であったが,7年前に両薬剤を中止し,ダビガトランに切り替えられた.入院4日前頃から呼吸困難,血痰が出現し,前日から発熱も認めたため入院となった.胸部単純X線写真,およびCTで両側肺浸潤影・すりガラス影を認め,肺炎または肺胞出血が疑われた.同日より抗菌薬(ピペラシリン/タゾバクタム)を開始し,ダビガトランは休薬したが,発熱,血痰は持続し,第2病日には右上葉のすりガラス影は増悪し,3 L/minの酸素投与を要する状態となったため,イダルシズマブ5 gを使用した.その後は解熱し,酸素投与も第7病日には中止し,第13病日に退院となり,本人および家族の意向により,以後は抗凝固薬を使用せずに経過観察する方針となった.ダビガトランによる肺胞出血の症例の報告は少なく,その治療に中和薬を用いた報告は非常に稀である.本症例は,腎機能の低下した超高齢者では,凝固能のモニタリング指標として用いられているaPTTがそれほど著明に延長していなくても肺胞出血を発症しうること,またダビガトラン中止後もaPTT低下に時間を要し,症状が遷延することを示している.

Editorial Comment
[症例]
  • 八重樫 貴紀, 中野 学, 村田 義治
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 3 号 p. 293-300
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2022/03/28
    ジャーナル フリー

     80歳代男性.糖尿病・高血圧症にて当院内科通院中.2年前に早期胃癌に対し開腹手術,3カ月前に右視床出血の既往あり.自宅で急に倒れたため当院へ搬送.弓部大動脈破裂の診断にて近医心臓血管外科へ転院のうえで緊急で胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR)施行.第31-91病日まで当院転院のうえで回復期リハビリテーションを行い,自宅退院となった.第104病日,尿閉となり,長期尿バルーン留置の方針となった.第142病日,定期尿バルーン交換時にCRP 15 mg/dLと上昇,CTにてグラフト遠位端の胸部下行大動脈周囲に3 cm程の膿瘍形成を認めた.エンピリックな広域抗生剤を使用するも,第149病日に吐血の後に永眠された.病理解剖の結果,化膿性の胸部下行大動脈炎による食道瘻ならびに胸腔内出血の所見を認めた.

     弓部大動脈破裂に対するステントグラフト留置術から5カ月弱で出現したグラフト感染を契機に再破裂・食道瘻をきたした1剖検例を経験したので報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 宇塚 武司, 中村 雅則, 杉山 博太郎, 近藤 麻代, 坂田 純一, 村井 大輔, 横式 庄司
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 3 号 p. 302-306
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2022/03/28
    ジャーナル フリー

     症例は55歳男性.慢性骨髄性白血病にて抗がん剤を内服中であった.発熱と意識障害を認め当院へ紹介となった.血液培養で溶連菌が検出され,心エコーでは高度大動脈弁逆流と広範な弁輪部膿瘍,大動脈弁輪下左室─右房瘻(Gerbode defect)を認めた.心不全は急速に進行したため,準緊急手術を施行した.

     手術では広範な大動脈弁輪部膿瘍と三尖弁中隔尖への進展と瘻孔の形成を認めた.感染組織を切除後,自己心膜パッチで大動脈弁輪を再建し,大動脈弁置換術を施行した.右房壁も三尖弁中隔尖弁輪を含む大きな欠損となったため,弁輪を作成後,自己心膜パッチを用いて修復した.

     当院では広範な郭清を必要とする感染性心内膜炎症例においても自己心膜を用いた再建術を行い良好な結果を得ており,今症例における手術法を中心に報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 柴田 純季, 菅根 裕紀, 川井 和哉, 浜重 直久, 上村 由樹, 円山 英昭
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 3 号 p. 308-314
    発行日: 2021/03/15
    公開日: 2022/03/28
    ジャーナル フリー

     症例は82歳男性.来院7日前から顔面浮腫が出現していた.来院前日,前医での経胸壁心エコー図検査で多量の心嚢液貯留が指摘され当院紹介となった.来院後ショックとなり緊急で経皮的心嚢ドレナージ術を施行した.心嚢液の細胞診では大細胞性B細胞リンパ腫細胞が検出された.全身精査で原発巣は指摘できず心嚢液原発と判断した.検体は破棄してしまいHHV8 DNA定量検査を提出できず確定診断はできなかったが,原発性浸出液リンパ腫類似リンパ腫と推定診断した.同疾患は浸出液のドレナージのみで寛解することも多く,化学療法は施行せず再貯留を認めなかったため退院とした.退院5カ月後に左胸水の貯留を認め胸水から前回の心嚢液と同様の細胞が検出されたため,原発性浸出液リンパ腫類似リンパ腫の再燃と診断した.左胸水は救急外来で破棄されてしまいHHV8 DNA定量検査を提出できなかった.左胸水ドレナージのみで再貯留を認めなかったため経過観察とした.

     浸出液にのみ腫瘍細胞が存在する稀な悪性リンパ腫が存在する.HHV8の関与がある場合は原発性浸出液リンパ腫,関連のない場合は原発性浸出液リンパ腫類似リンパ腫と診断される.原発性浸出液リンパ腫類似リンパ腫は高齢で免疫不全のない患者に多く,ドレナージで寛解に至る場合が多く,原発性浸出液リンパ腫と比べ比較的予後良好であるという特徴をもつ.今回,原発性浸出液リンパ腫類似リンパ腫と推定診断した症例を経験したため報告する.

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