2021 年 53 巻 3 号 p. 302-306
症例は55歳男性.慢性骨髄性白血病にて抗がん剤を内服中であった.発熱と意識障害を認め当院へ紹介となった.血液培養で溶連菌が検出され,心エコーでは高度大動脈弁逆流と広範な弁輪部膿瘍,大動脈弁輪下左室─右房瘻(Gerbode defect)を認めた.心不全は急速に進行したため,準緊急手術を施行した.
手術では広範な大動脈弁輪部膿瘍と三尖弁中隔尖への進展と瘻孔の形成を認めた.感染組織を切除後,自己心膜パッチで大動脈弁輪を再建し,大動脈弁置換術を施行した.右房壁も三尖弁中隔尖弁輪を含む大きな欠損となったため,弁輪を作成後,自己心膜パッチを用いて修復した.
当院では広範な郭清を必要とする感染性心内膜炎症例においても自己心膜を用いた再建術を行い良好な結果を得ており,今症例における手術法を中心に報告する.