心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
[症例]
原発性浸出液リンパ腫類似リンパ腫による心タンポナーデと推定診断した症例
柴田 純季菅根 裕紀川井 和哉浜重 直久上村 由樹円山 英昭
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 53 巻 3 号 p. 308-314

詳細
抄録

 症例は82歳男性.来院7日前から顔面浮腫が出現していた.来院前日,前医での経胸壁心エコー図検査で多量の心嚢液貯留が指摘され当院紹介となった.来院後ショックとなり緊急で経皮的心嚢ドレナージ術を施行した.心嚢液の細胞診では大細胞性B細胞リンパ腫細胞が検出された.全身精査で原発巣は指摘できず心嚢液原発と判断した.検体は破棄してしまいHHV8 DNA定量検査を提出できず確定診断はできなかったが,原発性浸出液リンパ腫類似リンパ腫と推定診断した.同疾患は浸出液のドレナージのみで寛解することも多く,化学療法は施行せず再貯留を認めなかったため退院とした.退院5カ月後に左胸水の貯留を認め胸水から前回の心嚢液と同様の細胞が検出されたため,原発性浸出液リンパ腫類似リンパ腫の再燃と診断した.左胸水は救急外来で破棄されてしまいHHV8 DNA定量検査を提出できなかった.左胸水ドレナージのみで再貯留を認めなかったため経過観察とした.

 浸出液にのみ腫瘍細胞が存在する稀な悪性リンパ腫が存在する.HHV8の関与がある場合は原発性浸出液リンパ腫,関連のない場合は原発性浸出液リンパ腫類似リンパ腫と診断される.原発性浸出液リンパ腫類似リンパ腫は高齢で免疫不全のない患者に多く,ドレナージで寛解に至る場合が多く,原発性浸出液リンパ腫と比べ比較的予後良好であるという特徴をもつ.今回,原発性浸出液リンパ腫類似リンパ腫と推定診断した症例を経験したため報告する.

著者関連情報
© 2021 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事
feedback
Top