2021 年 53 巻 4 号 p. 380-385
症例1:78歳男性.5年前に右冠動脈に対して経皮的冠動脈形成術,4年前に心房細動に対してカテーテルアブレーション施行.アブレーション手技中に心タンポナーデをきたし緊急開胸止血術を施行したが,周術期に陰性T波等の心電図変化を認め,新たな心尖部の壁運動異常を指摘された.冠動脈造影にて有意狭窄を認めなかったことから,冠攣縮に伴う心筋梗塞をきたしたものと考えられた.その後,薬物治療を行うも心不全入院を繰り返し,3カ月前より労作時息切れ増悪.
症例2:78歳男性.高血圧,糖尿病,腎不全の既往があり,4年前より労作時息切れを自覚.冠動脈に有意狭窄認めず,心不全に対し薬剤加療を行っていたが,数カ月前より労作時息切れ増悪.
2症例とも心エコーにて左室肥大とびまん性の壁運動低下,心臓MRI検査にて遅延造影像を認めた.また,99mTc-PYPシンチグラフィにて心臓への明らかな集積,心筋生検にてトランスサイレチン(TTR)を前駆蛋白とするアミロイドの沈着を認め,トランスサイレチン型(ATTR)心アミロイドーシスと診断された.さらに,TTRに遺伝子変異を認めなかったことから野生型であることがわかった.
考察:野生型ATTR心アミロイドーシスは予後3-4年と不良であり,タファミジス適応拡大にて診断の重要性が高まっているが,未診断例も多い可能性がある.今回我々は,症状出現から診断までに時間を要した野生型ATTR心アミロイドーシスの2例を経験したので報告する.