心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
53 巻, 4 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
OpenHEART
HEART’s Selection
大動脈解離:治療の進歩と今後の展望 ―ステントグラフトの進歩と共に― 企画:窪田 博(杏林大学 心臓血管外科)
HEART’s Column―基礎から臨床へ―
HEART@Abroad
HEART’s Up To Date
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 深水 亜子, 野村 善博, 甲斐 久史
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 53 巻 4 号 p. 353-359
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル フリー

     「脳卒中・循環器病対策基本法」の施行に先駆け,2018年に「健康な食事・食環境」認定制度が始まった.本制度は,健康な食事を,健康な空間で提供する事業所を認証する制度であり,日本高血圧学会(Japan Society of Hypertension以下,JSHと略)をはじめ13の学協会が参加したコンソーシアムが審査・認証を実施している.第8回臨床高血圧フォーラムにおいて「スマートミール」をテーマとしたセミナーを企画し,参加者に「スマートミール」弁当を提供して,スマートミールの普及啓発と認識状況,減塩食品の認識や利用状況等の把握を行うこととした.参加者には,自記式質問票を配布,回収した.2日間で得た有効回答のべ890名のうち,重複を避けるため第1日目の回答者564名を本研究の対象とした.

     スマートミールの認知度は全体で47%,試食経験は39%であったが,職種別に比較すると保健師や栄養士で高く,医師やその他では低い結果であった.一般的な減塩食品の利用状況は75%と高いものの,JSH減塩食品リストの認知度は62%・使用経験は44%であり,スマートミールと同様に保健師や栄養士で高く,医師やその他では相対的に低い結果であった.

     近年,食の外部化が進んでいるなかで,食の提供を担う各種企業が,医師や保健師,栄養士など多職種と連携し,スマートミールやJSH減塩食品リスト等の普及を通じて「健康な食事・食環境」の整備にさらに取り組んでいくことで,わが国の健康寿命の延伸に寄与することを期待する.

Editorial Comment
[症例]
Editorial Comment
[症例]
  • 山崎 和裕, 境 次郎, 金光 ひでお, 坂本 和久, 武田 崇秀, 工藤 雅文, 辻 崇, 福嶋 崇志, 熊谷 基之, 川東 正英, 井出 ...
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 4 号 p. 369-373
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル フリー

     77歳の男性.大動脈弁閉鎖不全症に対して他院にて外来フォローされていたが,胸部不快感出現のため当院に紹介入院となった.身体所見は,血圧134/40 mmHg,脈拍は60回/分で整であった.聴診上心尖部を中心に拡張期雑音を聴取した.心エコー検査にて左室駆出率55%,大動脈弁の心尖部まで到達する高度の逆流を認め,冠動脈造影検査では前下行枝に高度の狭窄を認めた.血液検査では貧血はなかったが,血小板数4.7×104/μLと減少していた.BNPは1389 pg/mLと高値であった.血小板数が低いが他の検査結果に異常はなかったため特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と診断された.胸部不快感と心不全があり,早期の手術が望ましいと考えた.血小板輸血で反応することを確認した上で免疫グロブリン大量療法を行って手術施行の方針とした.免疫グロブリンは400 mg/kg/日を術前3日前から5日間連日投与し大動脈弁置換術と冠動脈バイパス術を施行した.しかし手術時血小板数は増加せず,術中血小板輸血を必要とした.術後出血性の合併症はなかったが,血小板数は約50,000/μL前後で推移し術後35日目に退院した.ITPは高用量の免疫グロブリンは非常に効果的であると報告されているが,反応に乏しい患者もいる.今回は術中の血小板輸血で対応できたが,他の治療法を検討しておくことも重要と考えられた.

  • 掛橋 昇太, 鎌倉 令, 和田 暢, 山形 研一郎, 石橋 耕平, 井上 優子, 宮本 康二, 永瀬 聡, 野田 崇, 相庭 武司, 大野 ...
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 4 号 p. 374-378
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル フリー

     症例は16歳の女性.14歳時に水泳中にプール内で痙攣,意識消失した.自動体外式除細動器にて心室細動に対してショック作動を施行され,心拍再開後に前医に搬送となった.各種精査の上,不整脈原性右室心筋症(ARVC)の診断となり,若年であることから皮下植込み型除細動器(S-ICD)が選択された.当院紹介後,心室頻拍(VT)に対するショック作動を繰り返し,薬剤調整を試みるも洞性徐脈のため困難であった.心内膜側からのカテーテルアブレーション後もVTは抑制されず,薬物治療強化のため,S-ICD抜去および,経静脈植込み型除細動器植込み術を行った.術後,アミオダロンの導入を行い,VTの再発を認めるも,抗頻拍ペーシング機能が有効であった.今回,除細動器の選択に苦慮した若年のARVCの症例を経験したため,文献的考察を交えて報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 萬川 和, 仲野 有希子, 加藤 貴雄, 田崎 淳一, 牧山 武, 木村 剛
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 4 号 p. 380-385
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル フリー

     症例1:78歳男性.5年前に右冠動脈に対して経皮的冠動脈形成術,4年前に心房細動に対してカテーテルアブレーション施行.アブレーション手技中に心タンポナーデをきたし緊急開胸止血術を施行したが,周術期に陰性T波等の心電図変化を認め,新たな心尖部の壁運動異常を指摘された.冠動脈造影にて有意狭窄を認めなかったことから,冠攣縮に伴う心筋梗塞をきたしたものと考えられた.その後,薬物治療を行うも心不全入院を繰り返し,3カ月前より労作時息切れ増悪.

     症例2:78歳男性.高血圧,糖尿病,腎不全の既往があり,4年前より労作時息切れを自覚.冠動脈に有意狭窄認めず,心不全に対し薬剤加療を行っていたが,数カ月前より労作時息切れ増悪.

     2症例とも心エコーにて左室肥大とびまん性の壁運動低下,心臓MRI検査にて遅延造影像を認めた.また,99mTc-PYPシンチグラフィにて心臓への明らかな集積,心筋生検にてトランスサイレチン(TTR)を前駆蛋白とするアミロイドの沈着を認め,トランスサイレチン型(ATTR)心アミロイドーシスと診断された.さらに,TTRに遺伝子変異を認めなかったことから野生型であることがわかった.

     考察:野生型ATTR心アミロイドーシスは予後3-4年と不良であり,タファミジス適応拡大にて診断の重要性が高まっているが,未診断例も多い可能性がある.今回我々は,症状出現から診断までに時間を要した野生型ATTR心アミロイドーシスの2例を経験したので報告する.

  • 岡本 都, 越智 友梨, 久保 亨, 杉浦 健太, 宮川 和也, 馬場 裕一, 野口 達哉, 弘田 隆省, 濵田 知幸, 山崎 直仁, 北岡 ...
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 4 号 p. 386-392
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル フリー

     Eclipseとは天体現象である日蝕や月蝕の‘蝕’を意味する.近年,左室駆出率が保たれた患者に,明らかな誘因なく一過性にごく短時間生じる急性機能性僧帽弁逆流の報告がなされ,Eclipsed mitral regurgitation(MR)と称されている.症例は60歳代女性.突然の胸部不快感にて救急受診した.来院時,心電図にて広範な誘導でのST低下を認め,また高感度心筋トロポニンTが0.131 ng/mLと上昇していた.心エコー図では左室駆出率は保たれていたが,左室基部に限局した全周性の壁運動低下および新規の重症MRを認めた.冠動脈造影では有意狭窄病変は認めなかった.ニトログリセリン持続投与開始後,胸部症状は消失し,翌日には心電図変化,心エコー図での左室基部の壁運動異常およびMRともに消失していた.以後も胸部症状や心電図変化,MRの再燃なく経過し,2週間後の外来時には高感度心筋トロポニンTも正常値となっていた.本症例の病態として,たこつぼ症候群(Basal type)や冠攣縮性狭心症の可能性も考慮されるが,いずれも典型的とはいえず,その臨床像および経過はEclipsed MRの報告例と酷似していた.Eclipsed MRは稀な病態ではあるが,重症例や再発例の報告もあり,本疾患の存在を理解しておくことは重要と考え,ここに報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 大森 崇弘, 岩畔 哲也, 浅江 仁則, 宮本 芳行, 宮本 正興, 奥本 泰士, 木村 桂三
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 4 号 p. 395-400
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル フリー

    症例は70歳代男性.意識消失のため救急要請した.救急隊到着時無脈性心室頻拍で,電気的除細動後当院へ搬送された.心電図上Ⅰ・aVR・aVL・V1-V5誘導でSTが上昇,心エコー図検査で左室前壁が無収縮であり急性前壁心筋梗塞と診断した.ショック状態であり大動脈内バルーンパンピング(IABP)挿入後に緊急冠動脈造影検査を行ったところ,左前下行枝seg.6の完全閉塞を認め,経皮的冠動脈形成術(PCI)で再灌流後,閉塞部の先seg.7より起始する右冠動脈を認めた.CT画像も併せてLipton分類LⅡ-A型の単冠動脈症と診断した.PCI後に右側胸部誘導のST上昇と右室の内腔拡大と低収縮も認め右室梗塞の合併と診断したが,明らかな下壁梗塞の所見はなかった.第4病日にIABPを抜去,心臓リハビリテーション後に退院した.本症例は,左前下行枝seg.7より低形成の右冠動脈が起始する単冠動脈症で,seg.6の閉塞により前壁梗塞に右室梗塞を単独で合併した極めて稀な1例であった.

  • 大嶋 優, 大野 紘平, 大塚 紀幸, 伊藤 孝仁, 堀田 寛之, 加藤 伸郎, 吉田 大輔, 松本 倫明, 大岩 均, 藤瀬 幸保
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 53 巻 4 号 p. 401-407
    発行日: 2021/04/15
    公開日: 2022/04/18
    ジャーナル フリー

     症例1は完全房室ブロックを指摘された60歳代女性.心臓超音波検査で中隔の菲薄化を認め心サルコイドーシスが疑われたが,画像所見で心サルコイドーシスを疑う所見は心臓超音波検査のみであり,呼吸器系,眼,皮膚病変も認めず,臨床診断に至らなかった.右室心内膜心筋生検を施行し類上皮細胞肉芽腫が認められ心臓限局性サルコイドーシスの診断に至った.

     症例2は完全房室ブロックでペースメーカー留置後の60歳代男性.持続性心室頻拍が出現し,心臓超音波検査で経時的な心機能の低下,新規の心室瘤を認めたが,画像所見で心サルコイドーシスを疑う所見は心臓超音波検査のみであり,呼吸器系,眼,皮膚病変も認めず,臨床診断に至らなかった.症例1と同様に右室心内膜心筋生検施行にて,心臓限局性サルコイドーシスの診断に至った.

     心サルコイドーシスは早期発見,早期治療の観点から画像所見による診断が重要視されているが,臨床診断基準を満たさず診断に苦慮する症例も多い.心筋生検により診断に至り,心筋生検の重要性を再認識する2症例を経験したため,若干の文献的考察を交えて報告する.

Editorial Comment
feedback
Top