2021 年 53 巻 5 号 p. 484-489
症例は76歳,男性.腰痛のため近医受診.CT検査にて,最大短径42 mmの腎動脈下腹部大動脈瘤を認め前医に紹介受診.腹部大動脈瘤は経過観察の方針となったが,精査の経胸壁心エコー検査にて右室心尖部瘤を認め,心臓MRI検査で右室との交通口が3.9 mmと狭い27.5×13.5 mm大の右室心尖部仮性瘤と診断された.2019年12月当院紹介受診.発症時期不明の右室心尖部仮性瘤であり,瘤破裂の危険性が高いと判断し早期に右室瘤閉鎖術を施行する方針とした.術前胸腹部CT所見で,右室瘤は左第5肋間直下に存在したため,左前胸部第5肋間小開胸によるアプローチ,人工心肺不使用(オフポンプ)で心拍動下に手術を行った.術中,瘤外側からのエコーで瘤の心室との交通口である頸部および瘤内の血流を確認しながら,確実な瘤頸部を含めた閉鎖を行った.術後経過良好で心臓CT検査および経胸壁心エコー検査で心室瘤の残存を認めず,術後14日目に独歩退院した.病理組織診断の結果,瘤壁は心筋構造を認めず仮性瘤と診断された.