心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
[症例]
抗マラリア作用薬の導入で新たな血栓イベントを抑制できた抗リン脂質抗体症候群合併全身性エリテマトーデスの若年女性例
藤井 麻子香山 洋介山下 諒堤 穣志新島 旭船木 隆司山田 崇之滝沢 信一郎森 力芝田 貴裕吉村 道博
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 53 巻 7 号 p. 692-698

詳細
抄録

 症例は36歳女性.23歳時に全身性エリテマトーデスと診断され,それ以降ステロイドの内服調整で症状の増悪なく経過していた.35歳時に頸静脈血栓症を発症し,抗リン脂質抗体症候群の合併と診断された.他院で入院加療後に直接経口抗凝固薬(DOAC:direct oral anticoagulants)を開始され,症状の改善の後に退院となった.さらに同年,退院3カ月後より歩行時の左下肢痛を自覚するようになり,当院を受診した際の造影CTで,両側肺動脈と左大腿静脈以下に血栓像を認め,肺血栓塞栓症ならびに深部静脈血栓症の診断で再入院となった.入院後DOACからワルファリンへの変更とともに,抗マラリア作用薬の一つであるヒドロキシクロロキン(HCQ:hydroxychloroquine)の導入を行った.その後血栓症は徐々に改善し,退院後も現在に至るまで新たな血栓症の再発は認めていない.HCQは元来抗マラリア薬として開発され,主な作用機序として,マクロファージや樹状細胞におけるToll-like receptor(TLR)活性を抑制し,抗炎症作用を発揮することが知られている.さらに近年,HCQの血管内皮細胞における抗血栓作用機序や抗血栓効果を示す臨床試験も報告され,今後抗リン脂質症候群関連血栓症の発症および再発予防においても有効性が期待される.

著者関連情報
© 2021 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top