心臓
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[症例]
妊娠のためワルファリンを中断したことが契機となり危機的状況に陥った機械弁置換後の若年女性
野中 利通鎌田 真弓村上 優大沢 拓哉小坂井 基史櫻井 寛久櫻井 一
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2021 年 53 巻 7 号 p. 704-710

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抄録

 緒言:小児期に機械弁植込み手術を受けた若年女性に対しての妊娠前カウンセリングは重要であるが,妊娠可能な年齢に達する時期に小児科から成人循環器内科に移行することも多く,カウンセリング介入のタイミングは難しい.機械弁植込み後の若年女性が,ワルファリン中断をきっかけに危機的状況に陥った症例を報告する.

 症例:生後6カ月時に機械弁での僧帽弁置換術の既往のある若年女性.23歳時,妊娠のためワルファリンを4日間中断した後に来院.来院時のプロトロンビン時間国際標準比1.14であったため,ただちに入院しヘパリン持続点滴が開始された.この時,妊娠5週目であった.活性化部分トロンボプラスチン時間比2-3倍の範囲でヘパリンコントロールされていたが,入院18日目に血栓弁を発症し,ショック状態となり緊急手術による僧帽弁再置換術を受けた.摘出された機械弁には大量の血栓付着を認めていた.後遺症なく生存退院したが,妊娠は流産に終わった.

 考察:機械弁植込み後の妊婦に対する抗凝固療法は安全性が確立されていないため,母体・胎児へのリスクについて妊娠前カウンセリングが重要である.また集学的医療チームによる妊娠分娩管理が望まれる.

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