2021 年 53 巻 9 号 p. 989-995
維持透析中の56歳男性.呼吸困難を主訴に救急搬送され,心不全合併急性心筋梗塞の診断で緊急冠動脈造影検査を施行した.左前下行枝近位部および左回旋枝の近位部に高度狭窄を認め,心原性ショックのため7 Fr大動脈バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping;IABP)挿入の上2枝同時に経皮的冠動脈形成術を施行した.治療後もIABPを継続留置し集中治療室での管理が必要であった.第3病日より血中乳酸値が12 mmol/Lまで急激に上昇し水様便を認めた.造影CTでは,腸管および下肢動脈の造影効果を確認したものの,動脈硬化性病変を伴った大動脈の狭窄および腸管の浮腫状変化を認めたため,腸管虚血が否定できない所見であった.循環動態は改善傾向であり,乳酸値上昇の原因がIABPによる腸管虚血の可能性を考慮して,IABP抜去を行った.その後,速やかに乳酸値は低下し水様便も減少したことより,IABPによる腸管虚血に伴う乳酸値上昇と診断した.IABP使用下での乳酸値モニターが腸管虚血の早期発見に有用であった症例を経験したので報告する.