2022 年 54 巻 12 号 p. 1345-1350
非弁膜症性心房細動(NVAF)において,左心耳血栓は心原性脳梗塞の最大要因である.直接経口抗凝固薬(DOAC)は,ワルファリンに比較して,非劣性または優越性な全身塞栓予防効果を有し,かつ脳出血などの重大な出血合併症の抑制効果が大規模臨床試験で証明されている.しかし,高齢,高血圧,脳梗塞既往といった背景因子は,出血および塞栓の危険因子としてお互い一致しており,これらが集積したハイリスク患者群へのDOAC継続や減量に関して臨床医は常にジレンマを抱えている.2019年9月に本邦でも保険償還された経皮的左心耳閉鎖システム:WATCHMANTMは,無作為化試験においてワルファリンに比較し,有意な塞栓および出血予防,死亡率改善効果を示している.最近の無作為化試験においてもDOACに対して有意な出血予防効果が示されており,DOACの代替,補完療法としても注目されている.
循環器領域だけでなく消化器,脳神経,腎泌尿器,整形外科領域等において,抗凝固療法中のNVAF患者は多領域にわたって加療を受けている.このためWATCHMANTMの適切な患者選択のためには,循環器,脳神経を中心とした院内のハートブレインチームのみならず,地域において,綿密な病診および病-病連携形成が課題となっている.