心臓
Online ISSN : 2186-3016
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54 巻, 12 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
OpenHEART
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心疾患のプレコンセプションケア 企画:石津智子(筑波大学医学医療系 循環器内科)
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[総説]
  • 山脇 理弘, 酒井 毅, 笠井 陽介
    原稿種別: 総説
    2022 年 54 巻 12 号 p. 1345-1350
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2023/12/21
    ジャーナル フリー

     非弁膜症性心房細動(NVAF)において,左心耳血栓は心原性脳梗塞の最大要因である.直接経口抗凝固薬(DOAC)は,ワルファリンに比較して,非劣性または優越性な全身塞栓予防効果を有し,かつ脳出血などの重大な出血合併症の抑制効果が大規模臨床試験で証明されている.しかし,高齢,高血圧,脳梗塞既往といった背景因子は,出血および塞栓の危険因子としてお互い一致しており,これらが集積したハイリスク患者群へのDOAC継続や減量に関して臨床医は常にジレンマを抱えている.2019年9月に本邦でも保険償還された経皮的左心耳閉鎖システム:WATCHMANTMは,無作為化試験においてワルファリンに比較し,有意な塞栓および出血予防,死亡率改善効果を示している.最近の無作為化試験においてもDOACに対して有意な出血予防効果が示されており,DOACの代替,補完療法としても注目されている.

     循環器領域だけでなく消化器,脳神経,腎泌尿器,整形外科領域等において,抗凝固療法中のNVAF患者は多領域にわたって加療を受けている.このためWATCHMANTMの適切な患者選択のためには,循環器,脳神経を中心とした院内のハートブレインチームのみならず,地域において,綿密な病診および病-病連携形成が課題となっている.

Editorial Comment
[臨床研究]
  • 岡部 裕美, 山野 倫代, 藤仲 直美, 溝部 佑希, 大塚 明子, 加藤 ゆず子, 山野 哲弘, 沼田 智, 稲葉 亨, 貫井 陽子, 夜 ...
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 54 巻 12 号 p. 1355-1363
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2023/12/21
    ジャーナル フリー

     目的:当院での感染性心内膜炎(IE)患者の原因菌による臨床背景の違い,IEによる異常所見の心エコー図診断精度を明らかにすること.

     方法:2014年1月から2020年12月の7年間にDuke診断基準に基づきIEと診断した連続58症例を対象とし,診療録からデータを抽出し後ろ向きに分析検討した.

     結果:56症例で原因菌が同定され,レンサ球菌群が41%,黄色ブドウ球菌群が26%を占めた.疣腫サイズは菌種による有意差を認めなかったが,レンサ球菌群は発症から抗菌薬投与(中央値[最小値-最大値]:18日[1-137]),心エコー図評価日までの日数(82日[3-195])が有意に長く(いずれもp<0.05),初回心エコー図評価時には弁穿孔などの機械的合併症は黄色ブドウ球菌群と同程度に認められた.経胸壁心エコー図(TTE)では手術所見との診断一致率は66%であったが,経食道心エコー図(TEE)では85%に改善した.TEEでは疣腫と弁周囲膿瘍は100%検出可能であった.TTE,TEEともに検出困難であったのは大動脈弁位の穿孔であった.

     結論:原因菌によって臨床経過に違いを認めたが,IEの合併症に有意な違いを認めなかった.TEEの診断精度はTTEに比較して良好であり,早期にTEEを行うことが必要であると考えられた.

[症例]
  • 太田 和寛, 緑川 博文, 植野 恭平, 滝浪 学, 湯田 健太郎, 菅野 惠, 川村 敬一, 小野 正博
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 12 号 p. 1364-1369
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2023/12/21
    ジャーナル フリー

     症例は45歳の男性.今回入院の4カ月ほど前から発熱,関節痛を自覚するようになり,他院にて脊椎関節炎の診断で加療されていた.入院前日の夜,急激な前胸部痛で当院へ緊急搬送された.経胸壁心臓超音波検査で僧帽弁に疣腫を認め,精査の結果,急性冠症候群が疑われ緊急心臓カテーテルを施行し,#8 100%の病変を認めた.血栓吸引により血流再開に成功,吸引物は肉眼上血栓ではなく疣腫が疑われた.僧帽弁に疣腫を伴い,その塞栓により急性冠症候群を合併しており,カテーテル治療翌日に緊急開心術を施行した.僧帽弁は前後尖とも疣腫が存在し,切除し機械弁による僧帽弁置換術を施行した.起因菌はG群連鎖球菌で術後40日間の抗菌薬加療を行い血液培養の陰性化を確認して独歩退院となった.疣腫の塞栓による急性心筋梗塞は稀であり,文献的考察を加えて報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 三保 成正, 住居 晃太郎, 髙橋 信也, 須澤 仁, 富本 秀子, 岩崎 年高, 山本 佳征
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 12 号 p. 1371-1376
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2023/12/21
    ジャーナル フリー

     高血圧症,発作性心房細動につき治療中の78歳男性.数年前から下腿浮腫があり,1カ月前から労作時呼吸困難を認めていた.頻拍性心房細動を伴う心不全として入院したが胸水と心嚢液が増加し呼吸状態が悪化した.胸腔および心嚢ドレナージにて症状軽快し退院した.第26病日,発熱と呼吸困難息切れにつき急性肺炎として再入院し,抗菌薬点滴ですぐに解熱し軽快したが,第33病日,再度熱発し呼吸状態が悪化した.CT上,肺炎の再増悪はなく,心嚢液の再貯留もなかったが,びまん性の心膜肥厚と腹水貯留を認めた.血液検査上,肝障害・腎障害が進行していた.第43病日,右心カテ―テル検査を施行したところ両心室圧はsquare-root波形(dip and plateau)を示した.臨床的には滲出性収縮性心膜炎と考えられたが,両室拡張期圧均一化や心室間相互依存性を示す所見はなく,いわゆる拘束性心筋症の血行動態であった.内科的には心不全の管理が困難であったが,第99病日,心膜剝皮術を施行したところ劇的に改善した.

  • 岩﨑 司, 柴田 夏実, 金山 純二, 入江 忠信, 荒巻 和彦
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 12 号 p. 1377-1387
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2023/12/21
    ジャーナル フリー

     69歳女性が動悸と労作時の息切れを主訴に来院した.心電図は心房細動の頻脈,胸部X線では右胸心と肺うっ血の所見を認めていた.頻脈性心房細動による心不全の診断となり,外来フォローの上で投薬を開始した.1週間後の再診時には症状とうっ血の改善を認めていたが,心房細動は持続しており,待機的にカテーテルアブレーションを行う方針となった.血栓評価目的に行った術前の経食道心エコーでは,右胸心のため,角度を反転させて通常と同様の像を描出できるように記録した.右房に直接流入する左上大静脈とは別に,冠静脈洞を経由して右房に流入する右上大静脈遺残を認めていた.経食道心エコー中にマイクロバブルテストを行い,上大静脈の還流パターンの特定とシャント疾患の検索を行った.一般的に,造影CTで心血管系の構造を把握することはできるが,細い遺残血管やシャント血流の評価は難しいことがある.経食道心エコーにマイクロバブルテストを併用することは,上大静脈遺残の解剖学的診断の手段の一つとして有用であると考えられる.

  • 関谷 祐香, 尾﨑 和幸, 大久保 健志, 久保田 直樹, 髙野 俊樹, 木村 新平, 保屋野 真, 栁川 貴央, 柏村 健, 猪又 孝元
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 12 号 p. 1388-1397
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2023/12/21
    ジャーナル フリー

    症例は71歳,男性.慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)疑いに対して精査を勧められていたが,本人の希望により未施行であった.消化管出血を契機に肺高血圧クライシスに陥った.肺動脈造影等によりCTEPHと診断し,経皮的心肺補助装置(PCPS)を導入し,合計4回のバルーン肺動脈形成術(BPA)を実施し,約1カ月後にPCPSから離脱した.一般的にCTEPHは労作時息切れで発症し慢性に経過するが,本症例のように重症例では肺高血圧クライシスに至る症例も存在する.PCPSなどの集学的治療とBPAを繰り返すことで救命することができた1例を経験した.

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