心臓
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[症例]
血管内治療によりQOL改善を得た悪性下大静脈症候群の1例
中司 元隈 宗晴新地 まろか小池 明広
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2022 年 54 巻 7 号 p. 824-829

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抄録

 症例は80代女性.stageⅣの胆管細胞癌に対する化学療法中.腹満および両下肢浮腫が徐々に増大したために紹介となった.CTでは腫大した腹腔内リンパ節により下大静脈の圧排・閉塞を認めた.理学療法を行うも改善乏しく,浮腫により歩行能力低下および精神的苦痛を認めるようになったため,QOL改善を期待して血管内治療を行うこととし,閉塞した下大静脈から両側総腸骨静脈にかけてステントを留置した.術後下肢浮腫は軽減を認め,本人の精神的苦痛も緩和された.術後3カ月の時点でステント開存を確認し,うっ血症状の再燃は認めなかったが,術後4カ月で原疾患のため死亡された.

 一般に下大静脈症候群に対しては,理学療法と薬物療法で対処することが多いが,思うような効果を得られないのが実情である.また,下大静脈症候群を呈する症例はがんの終末期であることが多く,積極的治療も行いにくいために血管内治療の報告は少ない.ただデバイスや手技の進歩により比較的安全に血管内治療が行える現状では,がん患者の緩和ケアの一環としての血管内治療が選択肢の一つになると考えられるため報告する.

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