心臓
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54 巻, 7 号
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OpenHEART
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慢性心不全における分子的サブタイピング~その概念と臨床応用の可能性 企画:島田悠一(ニューヨーク・コロンビア大学病院 循環器内科)
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[臨床研究]
  • ─連続502例の検討─
    土田 隆雄, 鈴木 達也, 吉田 正隆, 古林 圭一, 矢野 健太郎, 寺下 和範, 山中 祐輝, 西浦 哲史, 外村 大輔, 嶋田 芳久, ...
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 54 巻 7 号 p. 768-775
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2023/07/22
    ジャーナル フリー

     背景:本邦で植込み型ペースメーカー治療が行われるようになり60年以上が経過し,今では安定した成績を得るようになった.現在,わが国では年間43000人以上の症例に新規にペースメーカーが植込まれている.一方で,いまだにペースメーカー植込み術後の感染,穿孔,リード損傷などの合併症は1-3%前後に起こると言われている.

     対象と結果:今回,2006年より2021年までの15年間に当院で行われた新規ペースメーカー植込み術連続502例の手術手技,合併症対策についてretrospectiveに検討を加え報告する.手術は原則,前胸部斜切開,橈側皮静脈direct puncture,心室リードの中隔留置,大胸筋下もしくは大胸筋筋膜直上のポケット作成で行われた.手術時間は平均74分(25-280分),術中にリードの穿孔や気胸の合併症は認めなかった.周術期抗生剤は原則2日間投与した.術後フォロー期間は平均1260日(1-4714日).フォロー期間中にポケットおよびリード感染や感染性心膜炎の発生は早期,晩期ともに認めずリード損傷も認めなかった.

     結論:我々の手術術式,および治療戦略は感染,リードトラブル等の合併症の予防に有用であると考えられた.

Editorial Comment
[臨床研究]
  • 前田 敏明, 前田 貴子
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 54 巻 7 号 p. 777-784
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2023/07/22
    ジャーナル フリー

     背景・目的:医師による入浴事故の聞き取り調査結果を従来の報告と比較して,その信憑性を検討した.

     方法:1,772人に入浴事故の聞き取り調査を行った.

     結果:1)死亡463件,重症41件,中等症112件,軽症22件,最軽症30件,合計668件の入浴事故があった.発生頻度に男女差はなかった.70歳以上の死亡は336件で,死亡の72.6%を占めた.入浴施設別では死亡の90.9%が家庭であった.

     2)最軽症例を除く入浴事故638件の事故発生場所は浴槽内462件,浴槽外134件,場所不明42件であった.重症度別で浴槽内が占める割合は死亡92.0%,重症49%,中等症41.1%,軽症36%であった.入浴死の約9割は浴槽内で発生していた.

     3)軽症・中等症・重症の175件中に脳卒中は23件(13.1%)あった.一般的な脳血管障害の種類頻度に比べて脳梗塞は少なく,頭蓋内出血が多かった.

     4)入浴死件数の年齢分布,男女の比率,家庭と共同浴場の比率,浴槽内と浴槽外の比率,非死亡例における脳卒中の占める比率などは従来の報告と同様な結果であった.

     結論:医師の聞き取りによる入浴事故調査は,入浴事故研究に極めて有用な手法と考えられた.

[症例]
  • 築澤 智文, 松尾 好記
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 7 号 p. 785-790
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2023/07/22
    ジャーナル フリー

     肥大型心筋症は,血行動態のダイナミックな変化をきたし得る疾患であり,冠循環の変化から虚血性心疾患と鑑別が困難なことがある.今回胸痛を主訴に救急来院し,不安定狭心症の診断で行った冠動脈造影検査を契機に,肥大型心筋症の診断に至った症例を経験した.

     症例は80歳女性,胸痛を主訴に救急外来受診した.心電図検査でⅠ,aVL,V3-6でST低下を認め,緊急冠動脈造影を行った.心外膜血管には有意狭窄は認めなかったが,中隔枝にsqueezing現象を認めた.肥大型心筋症を示唆する所見であり,心臓造影MRI検査を施行し,非対称性の左室壁肥厚を認め肥大型心筋症と診断した.入院時,脱水による腎前性腎不全を認め,輸液と利尿薬の減量により症状の改善を認めた.循環血液量減少により心筋の過収縮を生じ酸素需要が増加し,心筋虚血に至ったと考えられた.症状の改善後に冠血流予備能の測定と心筋シンチグラフィを施行したが,いずれも虚血を示唆する所見は認めなかった.脱水補正をしたことで虚血が改善したと考えられた.

     今回,不安定狭心症を発症し緊急冠動脈造影検査では心外膜冠動脈には有意狭窄は認めなかったが,中隔枝のsqueezingの所見を認めたことから,肥大型心筋症の診断に至った1例を経験したので報告する.

  • 山際 萌里, 今井 俊介, 照井 実咲, 有田 匡孝, 畑田 勝治, 松原 琢
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 7 号 p. 791-796
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2023/07/22
    ジャーナル フリー

     心嚢ドレナージによる右心拍出量増加に伴い,肺高血圧と急性肺水腫をきたす心膜減圧症候群が知られている.また,左室機能障害がある症例では心膜減圧症候群を生じる可能性があることが報告されている.

     症例は84歳女性.前医で心嚢液貯留を伴う大動脈弁・僧帽弁の連合弁膜症による慢性心不全として加療されていたが,呼吸困難感が増悪し当院に救急搬送された.心エコーで右室の拡張期虚脱を伴う多量の心嚢液貯留,重度の大動脈弁狭窄と僧帽弁狭窄,肺高血圧,三尖弁逆流を認めた.心嚢ドレナージを予定したが,心膜減圧症候群をきたすことが懸念されたため,スワン・ガンツカテーテル留置下にドレナージを施行した.ドレナージ直後から肺動脈圧はむしろ低下し,その後,呼吸状態は改善した.本症例では,重症肺高血圧症,三尖弁逆流症のために元々拡大していた右心系が心膜腔内圧の上昇によって圧排されていたが,この状態が心嚢ドレナージによって解除され再度右心系が拡張し,その結果,右室圧が上昇せず,肺動脈圧の上昇をきたさなかったこと,また,同様に僧帽弁狭窄のために拡張していた左房の圧排も減弱し,左房が拡張し,左房圧が低下したことも影響したと考えられた.大動脈弁狭窄症,僧帽弁狭窄症,肺高血圧症,三尖弁逆流症を伴う心タンポナーデの類似症例であっても,それぞれの弁膜症の重症度によって病態が一様にはならないことが考えられる.

  • 久保田 仁美, 間瀬 浩, 曽根 浩元, 武井 洋介, 田代 一真, 倉田 征昭, 辻内 美希, 前田 敦雄, 森 敬善, 小貫 龍也, 佐 ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 7 号 p. 797-802
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2023/07/22
    ジャーナル フリー

    COVID-19流行下では院外心停止例の病院到着までの時間が延長し,転帰が不良となる傾向が諸外国で報告されており,日本でも同様な問題が懸念される.COVID-19流行下において体外循環式心肺蘇生法(extracorporeal cardiopulmonary resuscitation;ECPR)を導入し良好な転帰を得た症例を,COVID-19流行以前にECPRを導入した症例の病院前経過と比較,考察し報告する.

     症例は67歳男性,来院時心肺停止で搬送された.救急隊現着時の初期波形は心室細動(ventricular fibrillation;VF),明確なwitnessがあり,bystander CPR(cardiopulmonary resuscitation;CPR)が行われていた.計8回の自動体外式除細動器(automated external defibrillator;AED)が作動し,一度心拍再開を認めたが,再度心停止した.救急要請から救急到着までの時間は12分,救急隊到着から病院到着までは21分であった.

     来院後もVFが持続したため,ECPRを導入した.病院到着時からECPR導入までに要した時間は32分であり,導入後に冠動脈造影(coronary angio graphy;CAG)を施行したところ,右冠動脈#①の99%狭窄を認め,経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention;PCI)を施行した.大動脈内バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping;IABP)を開始後に集中治療室へ入室した.その後,血行動態は改善し,第4病日には経皮的心肺補助装置を離脱,第5病日にIABPを抜去した.COVID-19 PCR検査の3回陰性が確認された後に,個室隔離が解除され,リハビリテーションを開始した.第35病日,独歩にて退院した.

  • 佐久間 実のり, 久保田 直樹, 尾崎 和幸, 阿部 忠朗, 塚田 正範, 沼野 藤人, 齋藤 昭彦, 黒川 孝国, 井神 康宏, 保屋野 ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 7 号 p. 803-810
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2023/07/22
    ジャーナル フリー

     症例は79歳男性.初発の心不全で入院した.心電図で完全左脚ブロック,心エコー図で左室の拡大(拡張末期径74 mm)と収縮低下(駆出率24%),膜様部心室中隔欠損症を認めた.心臓カテーテル検査では冠動脈に有意狭窄なく,心筋生検では二次性心筋症の所見はみられなかった.右心室でO2 step upを認め,肺体血流比は1.66であり,欠損孔閉鎖の適応と考えられた.高齢・低心機能のため開心術のリスクが大きく,経皮的心室中隔欠損閉鎖術を選択した.全身麻酔下で,大腿動静脈間でガイドワイヤーを欠損孔経由でプルスルーし,右心系からAmplatzerTM Duct Occluder Ⅰを留置した.その後,両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器(cardiac resynchronization therapy defibrillator;CRT-D)を留置し,至適な薬物治療を加えた.その結果,左室の縮小(拡張末期径47 mm)と収縮改善(駆出率42%)を認め,心不全徴候は軽快した.経皮的心室中隔欠損閉鎖術は低侵襲であり,本例のような高齢・低心機能で外科的手術が高リスクの症例において一つの選択肢と考えられる.

Editorial Comment
[症例]
  • 藤井 友優, 政田 賢治, 金川 宗寛, 柏原 彩乃, 住元 庸二, 下永 貴司, 木下 晴之, 岡 俊治, 在津 潤一, 倉岡 和矢, 杉 ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 7 号 p. 814-820
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2023/07/22
    ジャーナル フリー

     症例は65歳女性.X−1年1月左乳癌stageⅡBと診断され,左乳房切除術後,ドキソルビシン,シクロホスファミド,トラスツズマブなどによる化学療法を施行していた.X年3月より労作時の息切れが出現したため当院を受診した.胸部X線画像で心拡大と両側胸水貯留を認め,心臓超音波検査にて化学療法開始前と比較し左室駆出率の低下(59%から40%)を認め,うっ血性心不全の診断で当院に入院した.Heart failure with reduced ejection fraction(HFrEF)に準じた治療を行い,カルベジロール,エナラプリル,スピロノラクトンの導入を行った.冠動脈造影検査では有意狭窄を認めず,臨床的にがん治療関連心機能障害(cancer therapeutics-related cardiac dysfunction;CTRCD)と診断した.タイプ1に分類されるドキソルビシン,シクロホスファミドとタイプ2に分類されるトラスツズマブの併用歴のある患者に発症したCTRCDの1例を報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 中司 元, 隈 宗晴, 新地 まろか, 小池 明広
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 7 号 p. 824-829
    発行日: 2022/07/15
    公開日: 2023/07/22
    ジャーナル フリー

     症例は80代女性.stageⅣの胆管細胞癌に対する化学療法中.腹満および両下肢浮腫が徐々に増大したために紹介となった.CTでは腫大した腹腔内リンパ節により下大静脈の圧排・閉塞を認めた.理学療法を行うも改善乏しく,浮腫により歩行能力低下および精神的苦痛を認めるようになったため,QOL改善を期待して血管内治療を行うこととし,閉塞した下大静脈から両側総腸骨静脈にかけてステントを留置した.術後下肢浮腫は軽減を認め,本人の精神的苦痛も緩和された.術後3カ月の時点でステント開存を確認し,うっ血症状の再燃は認めなかったが,術後4カ月で原疾患のため死亡された.

     一般に下大静脈症候群に対しては,理学療法と薬物療法で対処することが多いが,思うような効果を得られないのが実情である.また,下大静脈症候群を呈する症例はがんの終末期であることが多く,積極的治療も行いにくいために血管内治療の報告は少ない.ただデバイスや手技の進歩により比較的安全に血管内治療が行える現状では,がん患者の緩和ケアの一環としての血管内治療が選択肢の一つになると考えられるため報告する.

第28回 肺塞栓症研究会
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