心臓
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[症例]
膵頭十二指腸切除1年後に発症した脚気心の1例
一柳 肇成瀬 元気吉田 明弘渡邉 崇量田中 俊樹高杉 信寛山田 好久金森 寛充大倉 宏之
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2023 年 55 巻 2 号 p. 187-194

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抄録

 症例は81歳女性.主訴は下腿浮腫.入院の2週間前より下腿浮腫,歩行障害,認知機能の低下が出現し,当院消化器外科を受診され,利尿薬を処方され内服するも下腿浮腫は軽減せず,当院消化器外科より当科紹介となった.既往歴として1年前に膵頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術を受けていた.来院時の身体所見では両側膝蓋腱反射が消失し,経胸壁心エコー図で左室は過収縮で,高心拍出量状態であった.脚気心を疑い,ビタミンB1静脈内投与を開始すると数日の経過で浮腫は改善した.第10病日に,入院時の血清ビタミンB1が低値であったことが判明した.以上より,膵頭十二指腸切除後のビタミンB1吸収障害による脚気心と診断した.脚気心は偏食や飲酒などがその背景として有名であるが,近年では,脚気心の原因の約3割を「消化器疾患・消化管切除後」が占めているとされる.下腿浮腫に歩行障害,認知機能障害などが合併し,膵臓癌の術後でもあったことから,心エコー図検査などでの精査の結果,ビタミンB1欠乏に伴う脚気心の早期診断と加療につながった1例であり報告する.

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