心臓
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55 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
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[症例]
  • 渡邉 仁美, 池田 尚平, 佐藤 公一, 武田 守彦, 福田 浩二, 三木 景太, 相澤 健太郎, 篠崎 真莉子, 柴 信行
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 2 号 p. 150-154
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー

     微小血管狭心症(microvascular angina;MVA)は近年注目されているが,診断的認識とその治療法の確立は遅れている.今回,我々はニコランジル(nicorandil;NIC)が有効である,心房細動を伴うMVAの症例を経験したので報告する.症例は58歳,女性.安静時胸痛の頻度増加のため当科を受診した.時折,胸痛に加えて動悸を自覚することがあった.安静時狭心症疑いにて,カルシウム拮抗薬,ニトログリセリン(nitroglycerin;NTG)舌下錠を服薬したが効果は乏しかった.精査のため,心臓カテーテル検査を施行した.冠動脈造影で器質的狭窄病変を認めず,アセチルコリン(acetylcholine;Ach)負荷試験を実施した.左冠動脈へのAch負荷で,即座に頻脈性心房細動(atrial fibrillation;Af)が発症し,動悸を伴う胸痛を自覚した.虚血性心電図変化を認めたが,冠攣縮は認めなかった.冠循環の乳酸産生が確認され,MVAと診断した.NTG冠注の効果は確認できなかったが,NIC冠注にて直ちにAfの停止と,症状消失を確認した.乳酸産生の消失も確認し,NICが有効と判断した.MVAは確立した治療法がなく,症状制御に難渋することも多い.検査時のNIC冠注はその有効性の確認に有用である可能性がある.

  • 中屋 雄太, 大島 清孝, 大木元 明義, 北岡 裕章
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 2 号 p. 155-161
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー

     50歳代,女性,脂質異常症で近医に通院中である.冬に入り5分程の胸痛,気分不良に加え嘔吐を認めた.そのため近医受診,狭心症疑いにて当院へ紹介となる.冠動脈造影検査より3枝病変を認めるも,検査中に造影剤アレルギーを認め,冠動脈バイパス術を提案された.しかし,本人が固辞されたため,非薬物療法目的にて外来心臓リハビリテーション(心リハ)開始となった.自宅が遠方により頻回な外来心リハが困難であった.

     そのため我々は,1回/週のAnaerobic Thresholdレベルによる有酸素運動に加え,自宅での運動として時速3.0 kmでの歩行を150分/週を指導した.7週間の外来心リハによりAnaerobic ThresholdおよびPeak VO2,Peak O2 pulseは+1.1 mL/min/kg(+11%),+3.2 mL/min/kg(+25%),+1.0(+12%)に改善した.

     通院困難な3枝病変症例に対する自宅での運動療法と生活指導を併用した外来心リハは有用である.

  • 福西 雅俊, 佐藤 麻美, 久島 幸穂, 小林 亮太, 後藤 浩実, 西川 幹人, 及川 達也, 吉田 一郎, 三浦 千砂子, 三浦 一郎, ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 2 号 p. 162-171
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー

     悪性リンパ腫の組織型で最も多いのはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)であり,節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型(ENKL)は非常に稀で予後不良である.我々は心タンポナーデを合併したENKLの1例を経験したので報告する.

     症例は40歳代男性.咳嗽と発熱,起座呼吸で近医を受診し心エコー検査にて心嚢液を指摘され心膜炎疑いで紹介来院.来院時心エコー検査では多量の心嚢液を認め,その性状は混濁し流動した内部エコーを伴っていた.心タンポナーデを合併していたため緊急ドレナージを施行し混濁した淡黄色の心嚢液を排出した.第3病日,血行動態は改善していたが心嚢液は残存していた.第9病日には心臓周囲に心筋輝度と比較して等輝度から高輝度を呈する増殖した腫瘤様エコーを認め,右房自由壁を中心に多く増殖していた.右胸骨アプローチでは右房自由壁の腫瘤を詳細に観察することができ,心嚢液細胞診での異型リンパ球と可溶性IL-2レセプター高値から悪性リンパ腫を疑い他院へ転院となった.リンパ節腫大がなく診断に苦慮したが,大網病変が出現したため生検施行.病理組織診断と臨床所見よりENKLと診断され化学療法を試みるも治療の甲斐もなく永眠された.心臓病変を合併するENKLは非常に稀であり,急速な腫瘤の増殖を認める際には悪性疾患,特にENKLを含めた悪性リンパ腫を念頭においた観察が重要である.

  • 山﨑 幸紀, 中野 優, 高橋 秀臣, 倉橋 果南, 西 智史, 吉本 明浩, 末松 義弘
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 2 号 p. 172-179
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー

    症例Ⅰは71歳男性,エホバの証人.健康診断で心房細動(Af)を指摘され,当院循環器内科を受診した.心原性脳塞栓症(CE)予防目的にエドキサバンによる経口抗凝固療法(OAC)を導入した.その後,小腸出血をきたし,出血リスクが上昇するOACの継続は希望されなかった.OAC離脱後,上腸管膜動脈(SMA)血栓塞栓症,脾梗塞,右腎梗塞を認めていた.そのため,外科的左心耳マネジメントの方針となり,小開胸下左心耳閉鎖術(MICS-LAAC)を施行した.無輸血手術であり,術後早期に退院となった.術後,心血管系イベントはなく経過している.

     症例Ⅱは77歳女性,エホバの証人.健康診断でAfを指摘され,当院循環器内科を受診した.虚血性大腸炎による消化管出血の既往があり,出血リスクが上昇するOACは希望されなかった.そのため,外科的左心耳マネジメントの方針となり,胸腔鏡下左心耳切除術(VATS-LAAR)を施行した.無輸血手術であり,術後早期に退院となった.術後,心血管系イベントはなく経過している.

     上記2症例はいずれもエホバの証人であり,消化管出血の既往がありOACによる出血リスク上昇を許容できない症例であり,低侵襲外科的左心耳マネジメントを施行した.同手術での出血リスクは低く,無輸血手術が可能である.そのため,今後OAC導入・継続困難例に対して有効な治療法の一つとなりうると考えられ,文献的考察を加えて報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 森岡 慧, 大谷 悟, 山本 剛, 松本 泰一郎, 倉田 裕次, 木村 裕司
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 2 号 p. 181-185
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー

     我々は下大静脈原発の平滑筋肉腫に対して,腫瘍を含めた下大静脈切除および人工血管を用いて下大静脈再建術を施行した症例を経験した.症例は71歳男性.自覚症状はなく腹部超音波検査で偶発的に腫瘤を指摘され当院紹介となった.造影CTでは,腎静脈より末梢の下大静脈に血管壁外へ突出し十二指腸水平脚を圧排する腫瘤を認めた.腫瘤は約60 mmであり辺縁不整形で内部に不均一な造影効果を認めた.PET-CTでは明らかな転移を認めなかった.下大静脈造影では下大静脈の閉塞と側副血行路として腰静脈および奇静脈系の発達を認めた.経十二指腸超音波内視鏡下穿刺吸引法で採取した組織診断では平滑筋肉腫を認めた.手術は開腹下に腫瘍切除および下大静脈人工血管置換術を行った.切除病変の病理組織診断は下大静脈原発平滑筋肉腫であった.術後6カ月目のCTでは再発を認めず,現在術後6カ月経過時点で経過観察中である.

Editorial Comment
[症例]
  • 一柳 肇, 成瀬 元気, 吉田 明弘, 渡邉 崇量, 田中 俊樹, 高杉 信寛, 山田 好久, 金森 寛充, 大倉 宏之
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 2 号 p. 187-194
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー

     症例は81歳女性.主訴は下腿浮腫.入院の2週間前より下腿浮腫,歩行障害,認知機能の低下が出現し,当院消化器外科を受診され,利尿薬を処方され内服するも下腿浮腫は軽減せず,当院消化器外科より当科紹介となった.既往歴として1年前に膵頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術を受けていた.来院時の身体所見では両側膝蓋腱反射が消失し,経胸壁心エコー図で左室は過収縮で,高心拍出量状態であった.脚気心を疑い,ビタミンB1静脈内投与を開始すると数日の経過で浮腫は改善した.第10病日に,入院時の血清ビタミンB1が低値であったことが判明した.以上より,膵頭十二指腸切除後のビタミンB1吸収障害による脚気心と診断した.脚気心は偏食や飲酒などがその背景として有名であるが,近年では,脚気心の原因の約3割を「消化器疾患・消化管切除後」が占めているとされる.下腿浮腫に歩行障害,認知機能障害などが合併し,膵臓癌の術後でもあったことから,心エコー図検査などでの精査の結果,ビタミンB1欠乏に伴う脚気心の早期診断と加療につながった1例であり報告する.

  • 多田 美穂, 荒瀬 裕己, 髙橋 智子, 小笠原 梢, 横山 靖浩, 山本 隆, 角谷 昭佳
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 2 号 p. 195-199
    発行日: 2023/02/15
    公開日: 2024/02/17
    ジャーナル フリー

     今回我々は,心臓カテーテル検査後に合併した仮性動脈瘤に対し超音波ガイド下トロンビン注入療法にて治療し得た2例を経験したので,文献的考察を含め報告する.

     症例①:70歳代,男性.左前下行枝病変に対して右大腿動脈より経皮的冠動脈形成術を施行した.同月に右下腿浮腫を認め,CTで右大腿動脈仮性動脈瘤による静脈圧排を認めた.超音波ガイド下で瘤内にトロンビンを注入し,仮性動脈瘤の治療を行った.

     症例②:60歳代,男性.左前下行枝病変に対して右橈骨動脈より経皮的冠動脈形成術を施行した.4日後にカテーテル刺入部より出血が生じ,腫脹と硬結がみられた.TRバンド®による止血を試みたが止血が得られず,超音波にて仮性動脈瘤を認めた.超音波ガイド下トロンビン注入療法にて治療を行った.

     仮性動脈瘤の治療において超音波ガイド下トロンビン注入療法が有効である条件として,仮性瘤への流入血流速が遅いこと,仮性瘤に“ネック”があることが想定され本症例はいずれもその条件に当てはまるものであった.また,これらの条件はカテーテル治療後の医原性仮性動脈瘤において認められやすいと想定され,低侵襲,安価,簡便であることから今後とも本治療法は有用である可能性がある.

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