2023 年 55 巻 4 号 p. 454-462
症例は49歳女性.44歳,48歳時に急性大動脈解離を発症し,保存的加療を受けていた.X年末より肺炎,心不全を呈し,当院での管理を希望され紹介受診となった.高身長,漏斗胸,側彎といった身体的特徴,大動脈解離,大動脈基部拡大があり,典型的なマルファン症候群と診断した.重度大動脈弁閉鎖不全症(AR)とそれによる心不全を呈していた.心不全の急性期管理を行ったのち,Bentall手術,上行大動脈弓部置換を施行,心機能は正常レベルまで回復し現在まで問題なく経過している.遺伝子診断ではFBN1変異を認め,マルファン症候群に典型的なCys残基のアミノ酸置換を伴うミスセンス変異であった.マルファン症候群でARに伴う高度収縮不全・心不全を生じても適切な外科治療と薬物療法を実施することで心機能の回復を得て良好な経過をたどった本例は示唆に富むと思われ,文献的考察とともに報告する.