2023 年 55 巻 6 号 p. 607-612
症例は70歳代,男性.肝予備能検査目的にアシアロシンチ®注(99mTc-GSA製剤)を投与した直後に咽頭違和感,咳嗽が出現し,血圧は触知不良となった.心肺蘇生を開始した結果,2分程度で自己心拍再開した.体幹部に紅斑がみられ,心電図でⅡ,Ⅲ,aVFのST上昇を認めた.経胸壁心エコー検査で下壁の壁運動低下を認めたため,急性冠症候群を疑い緊急で冠動脈造影検査を施行した.冠動脈造影にて右冠動脈および左冠動脈前下行枝に高度狭窄を認めたが,硝酸剤の冠注で狭窄病変は速やかに改善したため冠攣縮性狭心症と判断した.冠拡張薬の投与により心電図変化は消失し,経胸壁心エコー検査上の壁運動異常も改善していた.その後,ニコランジル,ステロイドの投与を行い,狭心症の再発はなく4日目に退院した.Kounis症候群はアレルギー反応に伴い狭心症・心筋梗塞をきたす症候群である.今回,アシアロシンチ®注を使用した肝受容体シンチグラフィ施行中に心停止に至ったKounis症候群の1例を経験したので報告した.