1978 年 10 巻 12 号 p. 1235-1240
従来Lutembacher症候群は僧帽弁狭窄症(MS) と心房中隔欠損症(ASD)がお互いの血行動態を修飾しあうため,とくにMSの所見がASDにマスクされて本症候群の診断は困難なものであった.本症候群の発生頻度はASDの6%程度と報告されているが,わが国での臨床報告は極めて少なく1%以下である.
しかし今日では心エコー(UCG)によるMSの変化は特異的でMSの診断はUCGにより容易になった.われわれはいままでASDと診断されていた患者にUCGによりLutembacher症候群と確定診断できた症例を経験した.今後UCGの普及が大きくなるにつれて,本症候群と診断されずにASDとして放置されていた症例が,UCGによりLutembacher症候群と確定診断される機会が多くあり,本症候群での臨床経験が増加するものと思われる.