1978 年 10 巻 12 号 p. 1241-1246
成人女子で動脈管開存症兼肺高血圧症に三尖弁閉鎖不全を合併した症例に対して開心根治術を施行した.動脈管開存症はもちろん先天性であるが三尖弁閉鎖不全症に関しては胸部X線の経過から後天性と考えられた.
両心カテアンギオから上記疾患と診断し,右左短絡はあるが左右短絡の方が優位であること,POBテストから手術適応と考えた.手術は体外循環下に食道温18℃まで冷却,循環停止下に肺動脈切開によりPDAを閉鎖し,三尖弁に対しては縫縮術を加えた.術後は気管切開,3週間におよぶ呼吸器管理を要したが,1年6カ月後の心カテ検査では肺血圧は術前の半分に低下し,三尖弁閉鎖不全は残存しているものの自覚症状は著明に改善されて正常生活に復することができた.現在2年半を経過して会社勤務を行っている.