1978 年 10 巻 5 号 p. 532-537
3年前より幅の広い異常P波と完全左脚ブロックが存在していた15歳の少女に,RosenbauB型のWPW波形と完全左脚ブロックが交互に出現し,最終的には完全房室ブロックによるAdamsStokes発作に移行した多彩な心電図変化を呈した症例を経験した.
本例の伝導路について次の所見が得られた.完全左脚ブロック時のHis束心電図ではA-H時間100msec.H.V時間110msecであった.WPW波形時のPQ時間は0.16秒と軽度の延長がみられた.頸動脈洞圧迫により容易に完全左脚ブ粋ック波形からWPW波形に移行しえた.WPW波形は常に一定の波形でRosenbaunB型・Boineau AB型で副伝導路は右室後壁寄りにある.しかも完全湧室ブロックを来たしたことより,副伝導路は正常房室伝導路の近傍を走行しているものと思われる.