1978 年 10 巻 8 号 p. 833-838
単心房症は大静脈系還流異常を伴う例が多い.最近われわれは,二重下大静脈および左上大静脈左房内還流を伴った単心房症の1手術治験例を得た.手術所見では僧帽弁および三尖弁に亀裂を認め,心内膜床欠損症の1型と考えられた.また右上大静脈は痕跡的であり,左上大静脈は直接左房内に還流しており,冠状静脈洞は欠損し小孔となって左房側に開口していた.一方左右の大腿静脈から同時に造影を行い,二重下大静脈を認めた.総腸骨静脈において左右静脈の吻合を認めたが,腎レベルでの吻合は認められず,左下大静脈は半奇静脈に接合していた.これら静脈還流異常の発生学的考察を中心に報告する.