抄録
22歳, 女子, 学生, 5年前に大動脈炎症候群の診断を受けている. 昭和51年9月ごろから炎症症状の再燃とともに, 労作時に前胸部痛が出現するようになった. 心電図ではV3-6で著明なST-T変化を認めた. ステロイド療法にて炎症症状の消失をみ, 昭和52年4月に選択的冠状動脈造影を施行した. 左冠状動脈入口部は高度の狭窄を示したが, 右冠状動脈は正常で, 円錐枝, 後下行枝から左前下行枝に著明な側副血行路の存在が認められた. 病変部位, 年齢, 狭心症の繊現などからA-C bypass手術の適応と考え, 昭和52年12月 A-C bypass手術を左前下行枝に施行し非常に良好な結果を得た. 本症の冠状動脈病変は約10%に認められるとされているが, 臨床的に診断しえた例は稀であり, 外科的療法を施行した例の報告は本例を含めて 7例にすぎない. 外科的療法に際しては, 手術時期の選択を慎重に行い, さらに術後の炎症の再燃を考慮し長期間のステロイド療法を行うことが肝要である.