心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
臨床 房室弁両室挿入症
剖検例における形態診断と外科治療の考察
田所 正路石沢 栄次鈴木 康之毛利 平堀内 藤吾福田 守邦巴 朝夫小山 田恵石川 茂弘垣畑 秀光定方 正一
著者情報
ジャーナル フリー

1980 年 12 巻 12 号 p. 1418-1427

詳細
抄録

房室弁両室挿入症はきわめてまれな発生異常で,その発生機序は総房室口が右方(心球)へ移動する発生過程の早期停止または過剰偏位と考えられており,複雑心奇形に合併することが多い.われわれはこれまで剖検により6例で本症を確認している.その内訳は単心室2例,TGA 1例,Taussig-Bing Heart 2例,修正大血管転位症1例である.本症の診断は困難でありこれらのうち術前に診断のついた症例はなかったが,1例でUCGにて本症を疑った.また剖検後の心血管造影所見の再検討により4例に本症を疑うべき所見が得られている.基本疾患に複雑心奇形を持ち外科治療のきわめて困難な場合が多い.2例に根治手術を施行し,3例に姑息手術を施行した.三尖弁両室挿入を合併したTGAや僧帽弁両室挿入を合併したTaussig-Bing Heartに対してはそれぞれの弁置換も考慮する必要があるが,幼少時期の根治手術は容易ではないので待期的手術の重要性も強調したい.

著者関連情報
© 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top