心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
臨床 腱索断裂による僧帽弁閉鎖不全症の4例
左房拍動波の診断的価値と超音波断層法による腱索断裂部位診断について
麻野井 英次中林 智之戸島 雅宏石川 忠夫中瀬 真一絈野 謙介石原 和明石原 茂樹中川 禎二前田 昭治藤村 光夫北川 正信
著者情報
ジャーナル フリー

1980 年 12 巻 6 号 p. 614-623

詳細
抄録
腱索断裂による僧帽弁閉鎖不全症4例について,その臨床所見と超音波断層法による断裂部位診断法を検討した.左心不全を繰り返した症例1では.細い腱索が5本切れていた.急激に発症し左心不全が持続した症例2では,太い腱索が切れていた.発症が不明で徐々に症状が増悪した症例3は,弁尖の肥厚と萎縮があり,すでに閉鎖不全があった上に腱索断裂を合併したものと思われた.したがって臨床症状とその経過は,腱索断裂の発生機序により異なると思われる.3例では,左房圧V波に類似した傍胸骨拍動が記録され,左房拍動波と診断した.左房拍動波は,他の原因による僧帽弁閉鎖不全ではみられず,本症の特微的所見と思われる.全例,超音波断層法により腱索断裂部位の診断を行い,手術した3例で確認できた.僧帽弁の短軸方向断層図で,腱索断裂部の弁尖付近が,拡張中期に弁口側へ折れ曲ったように偏位する所見が,部位診断上重要である.
著者関連情報
© 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top