心臓
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症例 左冠状動脈肺動脈異常起始症
1治験例の報告と本邦文献例の考察
片桐 幹夫入沢 敬夫小林 稔中村 千春西村 和典鷲尾 正彦高宮 誠目黒 泰一郎亀井 文雄岡崎 晟
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1982 年 14 巻 1 号 p. 88-96

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抄録
左冠状動脈肺動脈異常起始症の1例に対し,左冠状動脈開口部閉鎖および大動脈左冠状動脈バイパス術を施行し,良好な結果を得たので報告する.症例は46歳の女性で,過労時の失神発作およびガス中毒時の前胸部圧迫感を経験している.左前胸壁で収縮期雑音を聴取し,心電図でI, aV L, V 2,3,4にq波があり負荷陽性,肺動脈で32%の左右短絡を認め,右冠状動脈造影で本症と診断,手術を施行した.体外循環下に肺動脈を横切開し,左冠状動脈開口部を閉鎖し,自家大伏在静脈を,大動脈と左冠状動脈前下行枝にそれぞれ端側吻合した.グラフト内血流量は平均100ml/分であった.術後経過は良好で,静脈様に著明に拡張・蛇行していた右冠状動脈は,術後,直径を約60%に減じ,左回旋枝の血流は増加し,吻合枝間には,to and fro 現象が見られた.心電図で,V 2,3,4のq波は消失した.本症に対するパイパス術は,有用な術式と考えられる.なお,本症例は,本邦最高年齢である.
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