心臓
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症例 非穿通性外傷による大動脈弁破裂の1例
大西 茂明宮阪 実斎藤 大治長島 秀夫原岡 昭一福増 廣幸
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1982 年 14 巻 10 号 p. 1291-1296

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抄録
症例は38歳の男性.昭和56年1月24日自動車を運転中,電柱に衝突し前胸部を強打した.その後心雑音,心不全症状が出現し,4月6日姫路赤十字病院内科に入院した.聴診にてI音の減弱および胸骨左縁第5肋間に最強点を有するLevine V度の拡張期雑音を認めた.心臓超音波検査にて大動脈弁の早期開放,右冠尖の収縮早期の後方運動を認め,さらに無冠尖は拡張期に垂れ下がるように分離し,かつ細動を伴っていた.また拡張早期僧帽弁閉鎖,僧帽弁前尖,心室中隔の拡張期細動および心室中隔,左室後壁のhyperkinetic motionを認め,左室の容量負荷の所見と考えられた.以上の所見を総合判断して無冠尖の破裂による急性大動脈弁閉鎖不全症と診断し,緊急手術を施行した.手術時大動脈弁の無冠尖付着部よりの弁腹に1.1cmの裂孔を認めた.その他には肉眼的に弁尖に器質的変化を認めず,弁尖裂孔部の直接縫合閉鎖術が施行された.本症の診断に心臓超音波検査が有力な手段と思われたので報告する.
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