1982 年 14 巻 12 号 p. 1513-1519
近年ウイルス学的診断技術の進歩により,多数のウイルスが心筋炎を起こしうると考えられている.そのうちでもコクサッキーB群がウイルス性心筋炎をきたす最も頻度の高い原因と考えられている.われわれは頻度としては少ないが,臨床症状,胸部X線写真,心電図,ペアウイルス抗体価の4倍の上昇より,パラインフルエンザウイルス心筋炎が最も疑われた1症例を経験したので臨床所見と経過を記載した.この際心筋生検,201Tl心筋スキャンを施行し,臨床的には経過は良好であったが心筋生検の組織所見でかなりの心筋の変性を認め,急性期を過ぎた時点での201Tl心筋スキャンで,なお異常所見を得た.その後201Tl心筋スキャンは正常化している.心筋炎からうっ血型心筋症への移行も唱えられている点を考えると,心筋炎の予後,follow upの点でこれらの2つの検査が有用であると思われたので文献的考察を併せて行い報告する.