1982 年 14 巻 3 号 p. 377-383
今回経験した症例は,陳旧性前壁中隔梗塞を有する患者が,新たに新鮮下壁梗塞を発症して当院へ緊急入院,急性期に大量のウロキナーゼ,ヘパリンの線溶剤療法に加えニトログリセリン軟膏を使用し,早期の冠動脈再開通を示唆されたが,1ヵ月後の冠動脈造影検査にて, 責任冠動脈は開通していたが,その冠動脈内に可動性血栓を認めた.血栓は冠動脈内で2個が,約5mmの振幅をもって,収縮期に近位部へ,拡張期に遠位部へ可動し,さらに遠位部へ,coronary emboliとして,遊離する可能性を有していた.stalksを持って, 可動する冠動脈内血栓の報告はなく,今回症例呈示した.