抄録
単一冠状動脈肺動脈起始症は,きわめてまれな先天性心疾患で,われわれの知る限り,文献上5例の報告が見られるにすぎず,本邦では本症例が報告第1例と思われる,本症例は尿道下裂と淳留睾丸の外表奇形に,心室中隔欠損症,卵円孔開存症,大動脈2弁症,大動脈縮窄症,scimitar症候群などの複合心奇形を念併した単一冠状動脈肺動脈起始症の1歳5ヵ月男児例である.単一冠状動脈肺動脈起始症の予後はきわめて不良であり,ほとんどの症例は乳児期に冠不全により死亡することが多い.臨床経過ならびに剖検所見を提示し,若干の文献的考察を加えた.本症例も諸家の報告に多く見られるのと同様に.心筋梗塞の所見は認められなかった.