心臓
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研究 潜在性WPW症候群の成因に関する臨床心臓電気生理学的研究
長島 道夫伊藤 明一篠田 晋鈴木 彦之富永 忠弘
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1983 年 15 巻 11 号 p. 1159-1167

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抄録
正常房室伝導路を順伝導路,Kent束を逆伝導路とする興奮旋回路を有する発作性上室性頻拍と診断された54例について,WPW症候群波型の出現様式により分類し,電気生理学的検査所見をもとに検討を加えた.年齢をみると, 持続性WPW症候群34.5±13.4(平均±標準偏差)歳,間歇性WPW症候群40.3±14.8歳,両者を合わせた顕在性WPW症候群は36.5±13.9歳で,潜在性WPW症候群は46.4±13.1歳であった.潜在性の方が, 持続性および顕在性に比し, 高齢であった( p<0.01).Kent束の順行性有効不応期を比較すると,間歇性の方が持続性より延長していた(p<0.01). Kent束の逆行性有効不応期を各群間で比較すると,有意差は認められなかった.以上より,発作性上室性頻拍時の興奮旋回路の逆伝導路としてのKent束の機能は加齢による障害を受けにくいが,順伝導能は次第に障害されていくことが考えられ,顕在性WPW症候群より潜在性WPW症候群へと変化する症例の存在する可能性が示唆された.
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© 公益財団法人 日本心臓財団
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