抄録
大動脈炎症候群に伴う心外膜炎・心筋炎の報告は少なく,特に臨床的に心膜心筋炎と診断された報告はいまだ認められない.今回われわれは,くり返し多量の血性心のう液貯留を認めた患者で,心外膜生検・心内膜心筋生検により心膜心筋炎と診断しえた大動脈炎症候群の1例を経験した.症例は,一般検査成績上強度の炎症所見を示し,血管造影にて大動脈炎症候群と診断された.また多量の心のう液貯留を認めたが,心のう液中補体の低値を除いては特異的な異常はなかった.さらに心外膜生検で線維素性心外膜炎の組織像が得られ,右室心内膜心筋生検で心筋炎の存在が示された.確診後ステロイド療法を行ったところ炎症所見の消退とともに心のう液も消失した.大動脈炎症候群に伴う心外膜炎・心筋炎の原因はいまだに不明であるが,本症例においてはステロイド療法に対する反応性と心のう液中の補体が低値を示したことより,その原因に免疫反応が関係しているものと推測された.