心臓
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症例 症例総肺静脈還流異常症の1成人例
加納 右一郎熊沢 正継前田 尚武小村 明夫北村 政美杉浦 武新谷 宇一郎
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1984 年 16 巻 12 号 p. 1275-1280

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抄録

総肺静脈還流異常症は予後不良で1歳未満に死亡する例が多い.今回われわれは成人まで比較的無症状に経過した症例を経験した.
患者は38歳女性.体動時呼吸困難にて当科に入院した.身長141cm,体重34.5kg,軽度のチアノーゼと太鼓撥状指を認め,聴診上,胸骨左縁第2肋間にLevine4度の駆出性収縮期雑音とII音の固定性分裂を認めた.心電図は右軸偏位,完全右脚ブロックと右室肥大の所見を呈した.胸部X線像では典型的な8の字型を示した.心血行動態学的検査では,左右肺静脈は左房の後方で共通肺静脈幹を形成し,左房には還流せず,垂直静脈・左無名静脈を経て上大静脈に還流するsupracardiac typeのDarling分類Iaであった.肺静脈圧63/9(26)と中等度に上昇していたが,左右両心房間に圧差はなく,したがって心房中隔の欠損口が大きく,肺静脈系の還流障害もないことから十分な左室拍出量と動脈血酸素飽和度が保たれ,38歳まで比較的無症状のまま生存し得たものと考えられた.

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