心臓
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研究 甲状腺機能亢進症の循環動態異常における交感神経系の役割
安東 克之伊東 康藤田 敏郎
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1984 年 16 巻 3 号 p. 241-246

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抄録

甲状腺機能亢進症における循環動態異常は交感神経充進状態に類似している. そこで,本症における交感神経系の役割を調べる目的で, 7名の本症患者にプロプラノロール 60mg/日を 3 日間投与し, 循環動態, ホルモン動態の変化について検討した. プロプラノロール投与により, 心拍出量, 心拍数は有意の減少を認めたが, 一回拍出量は変化しなかった. さらに, 血漿ノルエピネフリン濃度も有意に低下し, 血漿ノルエピネフリン濃度と心拍出量の間には有意の正の相関が認められた.血漿レニン活性も有意の減少を示した. 以上のことから, プロプラノロールは甲状腺機能亢進症の循環動態異常を改善し, これには効果器のβ受容体阻害作用に加えて, 中枢神経系を介するノルエピネフリンの放出の抑制やシナプス前 β 受容体遮断によるノルエピネフリン遊出阻害作用も重要な役割を果していることが示唆された. また, レニンーアンジオテンシン系の関与も考えられた.

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