抄録
PTCRによる冠動脈早期再疎通の効果を推定するため,急性貫壁性心筋梗塞49例を対象に,それらを回復期の冠動脈造影所見にもとづき,100%閉塞群・90~99%狭窄群・90%未満狭窄群の3群に分類し,梗塞部位別に左室駆出率・局所壁運動を比較検討した.
局所壁運動異常をnormal 0点・reduced 1点・none 2点・dyskinetic 3点・aneurysmal 4点とスコアー化し,segmentごとに3群を比較した.閉塞群のスコアーが,前壁梗塞ではsegment 2で2.40±1.11点,下壁梗塞ではsegment 4で1.80±0.40点となり,他群に比較して有意に高得点となり,より強い壁運動異常の存在が明らかになった.狭窄群間には以上の検討で差を認めなかった.心機能では,前壁梗塞の100%閉塞群で駆出率が35.2±11.2%と他群に比較して有意に低値となった(p<0.05).下壁梗塞では差がなかった.
以上の結果から,急性貫壁性心筋梗塞では冠動脈の非閉塞という状態が,心機能温存上重要である事が示唆された.