1986 年 18 巻 12 号 p. 1473-1477
原発性心臓腫瘍は,非常にまれな疾患である.最近われわれは,学童心臓病検診がきっかけとなって無症状のうちに右室内心臓腫瘍が発見され,外科的に摘除しえた症例を経験したのでここに報告する.
本症例は14歳になる生来健康な女子で,中学3年生の時の学校検診で心雑音を指摘され,当科を受診した.超音波心断層法にて右室内心臓腫瘍が疑われ,さらに心臓カテーテル検査を行ったところ,右室流出路に小鶏卵大の腫瘍を認め右室圧が上昇していた.自覚症状はまったくなかったが,放置すれば突然死の危険もあるため,外科的に摘除した.組織学的には粘液腫であった.術後の経過は順調である.
原発性心臓腫瘍の中では粘液腫は比較的多くみられるが,右室に発生するものはまれである.過去の報告と本症例をまとめ,検討した.