心臓
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18 巻, 12 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 石川 辰雄, 斎藤 正敏, 望月 信幸, 二宮 恵子, 渡辺 茂
    1986 年 18 巻 12 号 p. 1369-1373
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Isolated left cervical aortic archの1例につき,心血管造影所見を中心に報告した.われわれの症例の特徴は(1)left cervical aortic archで,(2)左総頸動脈は縦隔内で分枝し,(3)上行大動脈左側後面にくちばし状の小憩室が存在し,(4)下行大動脈上部上縁には軽度の瘤状不整を認めるなどであった.第3の特徴については,われわれの調べた範囲で,報告はなかった.第2と第3の特徴を考え合わせると,胎生期の第3弓が大動脈弓の形成に関与していると推論される.上行大動脈左側後面の小憩室はその小構造のため,血管撮影上,適切な斜位および,画像の拡大などの注意がはらわれないと,見落される可能性が大きい.以前の報告では,大動脈弓・下行大動脈の位置および上行大動脈からの腕頭動脈枝の分枝のvariationからのみ発生学的推論を展開している.しかし,われわれの症例のような痕跡的小憩室の合併の可能性もあり,cervical aortic archの発生学的推論を発展させるのに重要と思われた.診断上,その痕跡的小憩室の合併の有無を確認する必要がある.
  • 小林 順二郎, 大西 健二, 春日井 務, 岡村 弘光, 小林 芳夫, 塚口 功, 青木 智寿
    1986 年 18 巻 12 号 p. 1374-1378
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は9カ月のDown症候群の女児.繰り返す気道感染と体重増加不良のため当科を受診Levine 2/6度の収縮期雑音を聴取した.胸部X線像上心胸郭比56%,心電図上右室肥大を認めた.超音波検査,心臓カテーテル検査および心血管造影にて心室中隔欠損(VSD),心房中隔欠損(ASD)を伴う左冠動脈左房瘻と診断した.肺動脈圧は体動脈と等圧で,肺体血流量比が1.3であったため根治手術を施行した.体外循環下にVSD,ASDを閉鎖,冠動脈瘻は左房開口部,瘻および左冠動脈より瘻起始部の3カ所で結紮した.術後検査にて肺動脈圧は低下し,冠動脈瘻は消失しており術後31日目に元気に退院した.
    冠動脈瘻は先天性心奇形のうち比較的まれな疾患である.瘻の流入部位としては右心系が約90%を占め,左房は欧米においては約5%であり,本邦においては1例の報告を見るのみである.本例のごとく乳児期に根治手術を要する心奇形を合併する左冠動脈左房瘻は本邦における第1例と考えられる.
  • DDD pacemaker(AV間隔65msec)と経口verapamilの併用効果
    横山 正一, 新宮 哲司, 坂田 和之, 岩瀬 知行, 吉田 裕, 森 典子, 高山 真一, 星野 恒雄, 鏑木 恒男
    1986 年 18 巻 12 号 p. 1379-1386
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Concealed WPW症候群によりincessant tachycardiaを呈す症例にAV間隔を65msecに短縮したDDD pacemakerを植え込み,経口のverapamilを併用して頻拍を抑制した.DDD pacemakerによるcircus movement tachycardia のcontrolはこれまで報告がなく新しい治療法になりうると考え報告した.症例は51歳男性.覚醒中はほとんどずっと150/分の頻拍,夜間の睡眠時のみ60/分前後だった.洞調律時の血圧は130/70mmHg,頻拍時は90/50mmHgで労作時の息切れとふらつきが強かった.頻拍時の心電図でQRSは正常,PはII,III,aVFで下向きRP'/RRは0.35である.頻拍はいったん停止しても数拍のうちに期外収縮によらずに洞調律にひき続いて再び頻拍となり,これをくり返した.電気生理学的検査で右房後壁中隔よりに逆伝導のみ可能の副伝導路を有するconcealed WPW症候群と診断した.頻拍の停止にはdiltiazemの静注が有効だったが経口の抗不整脈薬はほとんど予防効果を示さず,また患者は手術によるbypass切断を希望しないためpacingによる頻拍の抑制を試みた.心房のsingle,coupledあるいはburst刺激では時に心房粗動,細動を誘発し,またいったん停止させ得ても数拍の洞調律のうちに次の頻拍に移行した.このため発作の停止よりも予防を目的としてAV間隔を65msecに短縮したDDD pacemakerを入れ心室の早期興奮を図り,これに経口のverapamilを併用してほぼ完全に頻拍を抑制した.
  • 小田 弘隆, 相沢 義房, 鈴木 薫, 佐藤 政仁, 相沢 雅美, 村田 実, 森川 政嗣, 柴田 昭, 金沢 宏, 宮村 治男, 江口 昭 ...
    1986 年 18 巻 12 号 p. 1387-1393
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Fallot四徴症根治手術および,肺動脈弁置換術後,心室性頻拍(VT)が出現する症例を経験した.VTの治療として,外科的療法が不可能と判断し,カテーテル電気的切除術を行い成功した.VTの機序はre-entryによるものと思われ,その最早期興奮部位は右室流出路(RV outflow)であった.カテーテル電気的切除術は,Electro-Catheter Co.Cook 6 F(3極)を使用し,catheter tipを陰極,右側胸部の対極板を陽極とした.全身麻酔下に直流除細動器より200 joule 3回の放電を続けて行った.RV outflowでVT時にfragmentationを記録した電極からの放電は不成功であった.VT時心腔内心室電位が体表面心電図QRSより30msec先行する部位での放電にて成功した.術後合併症はなく,6カ月現在VTの再発はない.本症例はFallot四徴症根治手術後の難治性心室性頻拍症に対して,初めてのカテーテル電気的切除術であるため報告した.
  • 住友 直方, 原田 研介, 大国 真彦, 伊東 三吾, 小林 弘, 桜田 春水, 渡辺 浩二, 本宮 武司, 平岡 昌和
    1986 年 18 巻 12 号 p. 1394-1401
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    頻拍性心房性不整脈,洞不全症候群に心室頻拍を合併した1小児例を経験し,電気生理学的検討を行ったので報告する.患児は7歳男児で,6歳時に近医で上室性頻拍,および洞不全症候群と診断され,精査目的で入院となった.入院時理学的所見,胸部X線,心エコー図,心筋シンチグラムに異常はなかった.入院時の心電図は,心拍数75/分で,PQ時間200 msec,QRS時間100 msecと軽度の延長を認めた.電気生理学的検査では,安静時AH時間90 msec,HV時間40 msecと正常範囲であった.洞結節回復時間は2,950 msec,洞房伝導時間は240 msecと延長していた.右室頻回および早期刺激法により心室頻拍が,右房頻回および早期刺激法により心房粗動,心房頻拍が誘発された.頻拍は,右室あるいは右房刺激にて停止可能であり,頻拍の機序としてリエントリーが考えられた.また,心室頻拍と心房頻拍が同時に存在するdoble tachycardiaも認められた.心房粗動,心房頻拍,心室頻拍はいずれも,ベラパミル,ジソピラマイド静注後は,誘発の予防が可能であった.本例では,器質的心疾患の有無は明確にできなかったが,アトロピン静注後も洞不全のあること,QRS幅が拡大していることより,刺激伝導系を含んだ心筋に何らかの異常があることが示唆される.
  • 覚前 哲, 三宅 路子, 鼠尾 祥三, 長谷川 浩一, 寒川 昌信, 沢山 俊民, 石田 正矩, 江尻 通麿
    1986 年 18 巻 12 号 p. 1402-1406
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,男性.スズメバチ刺傷後に下壁梗塞を発症し入院.既往歴に2回のスズメバチによる刺傷があり,いずれも軽い呼吸困難と胸部圧迫感が出現した.冠危険因子として喫煙,肥満,糖尿病,高脂血症があった.冠動脈造影では,右冠動脈近位部(segment 2)の完全閉塞を呈し,前下行枝および回旋枝の近位部に壁の不整を認めた.左室造影では下壁領域(segment 5)のakinesisを示した.
    ハチ刺傷による病害は,本邦では農山村の各地域や養蜂家の間で多く発生し,その臨床症状は,発赤,腫脹,疼痛などの局所反応とアナフィラキシー様の全身反応に分けられる.大部分が局所反応を呈する軽症例であるが,時には重篤な全身反応を来し死亡する場合もある.しかし,本例のように,ハチ刺傷により心筋梗塞を発症した例は極めてまれである.しかも,本例は冠動脈造影にて冠閉塞が証明された第1例と考えられる.梗塞発症のメカニズムとして,発症前の器質的冠狭窄の存在に加えてハチ刺傷に基づくアナフィラキシー反応の結果,1)体血圧の低下を介した局所冠血流の減少,2)同じくcoronaryspasmのいずれかまたは両者が誘因として関与したものと思われる.
  • 大橋 秀隆, 大保 英文, 大嶋 義博, 細川 裕平, 橘 秀夫, 鄭 輝男, 三戸 寿, 山口 眞弘
    1986 年 18 巻 12 号 p. 1407-1412
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    総動脈幹症は比較的まれな疾患であるが,予後不良で早期の外科的処置を要する.われわれは生後34日,3,280gの本症男児に一期的根治手術を施行し良好な結果を得た.患児は生後3日目に哺乳不良,心雑音,チアノーゼのため当院に入院した.多呼吸,心拡大がみられ,強力な内科的治療が行われたが,呼吸困難が進行し,生後33日目に心臓カテーテル心血管造影検査を行い,総動脈幹症I型と診断された.翌日,超低体温低流量体外循環下に12mm Hancock valved conduitを用い根治手術を施行した.手術時,胸腺欠損が認められた.胸骨の一期的閉鎖は困難であったため,胸骨は開放として心膜および皮膚を補填拡大し創を覆い手術を終え,術後27日目に胸骨を閉鎖した.術後長期にわたりトラゾリン投与を必要とし,また術後5カ月時の心精査にて心内修復は良好であったがPp/Ps0.55と肺高血圧の残存がみられた.このことから本症例では生後34日ですでに肺血管の閉塞性病変が進行していたのではないかと思われた.本症例の経験から,心不全,呼吸不全の内科的コントロールが困難な症例では,新生児,乳児期早期の一期的根治手術を考慮する必要があると考えられた.
  • 金沢 正晴, 遠藤 嗣有子, 布川 徹, 武山 大也, 鈴木 沢也, 八島佳 生子, 高橋 誠, 鈴木 敏巳
    1986 年 18 巻 12 号 p. 1413-1418
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    リウマチ熱の経過中に完全房室ブロックから第2度および第1度房室ブロックを経て正常伝導に回復した症例を経験した.
    患者はリウマチ熱の既往がある34歳の男性で発熱,膝関節痛を主訴として入院,一過性に大動脈弁および僧帽弁逆流が出現した.血沈の亢進,白血球の増加,CRP強陽性,ASO・ASK値の上昇を認め,リウマチ熱と診断した.入院時における心電図の軸およびQRS波の幅は正常であったが,P波が120/分,QRS波が75/分の完全房室ブロックを呈し,その後Wenckebach型,ついでMobitz II型第2度房室ブロックとなり,翌日には第1度房室ブロックに移行,入院第19日に正常伝導に回復した.
    リウマチ熱における心電図所見としては診断基準に含まれるPQ時間の延長すなわち第1度房室ブロックが高率にみられるが,本症例のように完全房室ブロックの出現する頻度は極めて少ないとされている.さらに,本症例では完全房室ブロックから正常伝導に回復する過程でWenckebach型およびMobltz II型の2種類の第2度房室ブロックを観察することが出来たので,臨床的に貴重な症例と考え報告する.
  • 高安 徹雄, 椎名 明, 手塚 恵理子, 藤田 俊弘, 土谷 正雄, 柳沼 淑夫, 細田 瑳一, 大原 務, 福島 鼎, 長谷川 嗣夫, 高 ...
    1986 年 18 巻 12 号 p. 1419-1424
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は45歳女性.昭和48年頃より左手の脱力感を覚え始め,昭和53年左橈骨動脈拍動の欠如を指摘され当院胸部外科に入院した.大動脈造影にて,左鎖骨下動脈の完全閉塞と右腕頭および左右総頸動脈の狭窄を認め,大動脈炎症候群と診断された.昭和58年頃より頸部,顔面の腫脹をくり返し,同年12月上大静脈症候群の疑いにて入院となった.静脈造影にて右鎖骨下静脈の求心性狭窄と左右腕頭および上大静脈の壁不整を伴う狭窄像が認められた.利尿剤の投与により顔面および頸部の浮腫は改善し,その後の静脈造影では右鎖骨下静脈の求心性狭窄は著しく改善していたが,左腕頭静脈および上大静脈については著変を認めなかった.頸静脈の生検では壁の肥厚とそれに伴う内腔の狭窄が認められ,また円形細胞の浸潤,巨細胞を含む肉芽腫および巨細胞の弾性線維貪食像を認めた.以上のことから深部静脈炎による上大静脈症候群と診断し,この病理組織所見が大動脈炎症候群の罹患動脈病変の所見によく一致するものであることから,静脈炎が大動脈炎症候群と同様の機序で発症した可能性が考えられた.
  • 小西 敏雄, 布施 勝生, 幕内 晴朗, 久木田 雅弘, 加藤 健一, 西村 重敬, 西山 信一郎, 中西 成元, 関 顕
    1986 年 18 巻 12 号 p. 1425-1431
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    動脈グラフトを使用して冠血行再建術を行った.症例は68歳の不安定狭心症の男性であり,両腸骨動脈の閉塞性動脈硬化による間歇性跛行を合併していた.術前の冠動脈造影検査時に上行大動脈の広範な石灰化が認められ,CT検査では石灰化のない部分は上行大動脈の心基部側に限られていることが判明した.人工心肺の動脈送磁カニュレーションはこの部から行う以外になかった.そこで通常行われているvein graftによるA-Cバイパスは行えず,近位側吻合の不要な内胸動脈グラフトによる冠動脈バイパス術を行った.術後患者はすみやかに回復し狭心痛は消失し退院した.
    虚血性心疾患では大動脈にも動脈硬化を伴う可能性が他疾患よりも高く,上行大動脈の石灰化の有無を常に念頭に置く必要がある.この石灰化の認知には冠動脈造影時の透視による観察が有効であり,CT検査は硬化性病変の程度と局在の判定に優れていた.このような上行大動脈硬化症例に対する冠血行再建術式の1つとして,内胸動脈グラフトによる冠動脈バイパス術は有用な手段と考えられた.
  • 児玉 英昭, 酒井 義雄, 牧 明, 土持 隆彦, 一安 幸治
    1986 年 18 巻 12 号 p. 1432-1438
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,43歳の男性で3カ月程前から生じた動悸および浮腫の精査のため,昭和58年7月25日宮崎県立延岡病院入院となる.心電図にて心房細動,胸部X線写真にて心膜の石灰化,心カテーテル検査にて,心室圧曲線はdip and plateau patternを示し,右室のend-diastolic to systolic pressure ratioは42%と高値で,肺動脈楔入圧,肺動脈拡張期圧,右室拡張終期圧,右房圧は15mmHg程度のdiastolicequalizationを示した.また血清総蛋白量は3,8g/dlと著明な低蛋白血症を示した.以上より,低蛋白血症,心房細動を伴う収縮性心膜炎と診断し直流除細動を試みた.除細動後,末梢静脈圧の低下,LVETcの改善がみられ,除細動後約15週目には血清総蛋白量は6.4g/dlと正常化した.収縮性心膜炎に低蛋白血症が生じる原因として,蛋白漏出性胃腸症が報告されてきているが,その機序として,静脈圧の上昇によるとする説と,縦隔リンパ管の病変によるとする説があるが,本症例は前者の機序を支持した.また本症例は,心房除細動後,心機能の改善および静脈圧の低下がみられincomplete restrictive processの状態の収縮性心膜炎が考えられ,心房細動を生じた収縮性心膜炎において早期に除細動を試みることは,意義のあることと考えた.
  • 山村 真由美, 宮保 進, 山村 至, 多々見 良三, 石瀬 昌三
    1986 年 18 巻 12 号 p. 1439-1447
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は56歳の男性でこれまで明らかな胸部圧迫感および胸痛を認めたことはなかった.59年5月24日,当院眼科で白内障の術前処置としてglycerol 500ml点滴静注をうけたが,点滴開始後7時間ほどしてから冷汗を伴う胸部圧迫感,胸痛が頻発するようになった.約45時間後の5月26日に行った,treadmill運動負荷による心電図変化でII, III, aVF, V5~6誘導でST上昇を認め,異型狭心症疑いにて当科に紹介された.最後の胸痛発作から4日目の28日にergonovine負荷施行するも胸痛発作,心電図変化および冠動脈造影上99%以上の狭窄は誘発されなかった.そこで6月11日にglycerol点滴静注後約9時間目に再度ergonovine負荷を施行したところ,胸痛,自然発作と同一の心電図変化および冠動脈造影上seg6, seg4-PDに完全閉塞を認めた.高張浸透圧剤の影響持続時間を確認するため,glycerol点滴開始後43時間目にergonovine負荷を施行したところ,胸痛と心電図変化を認めた.高張浸透圧剤であるglycerol投与が,冠血管のtonusの亢進している異型狭心症の患者において容易に血管反応性の変化をもたらし,spasmの易発生の状況を作りだす引き金になったことを強く疑わせた.またそのような易spasm性が40数時間続くことも考えられ,glycerolなどの高張浸透圧剤使用時にはspasm発生の可能性も考慮しなければいけないと思われた.
  • 佐藤 智太郎, 桐山 勢生, 宮沢 裕治, 石田 明弘, 善根 孝仁, 佐々 寛己, 安田 鋭介, 遠藤 斗紀男, 奥村 恭己
    1986 年 18 巻 12 号 p. 1448-1453
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    胸部打撲で生じた左冠動脈瘤に起因すると思われる急性前壁中隔梗塞の1例を経験した.症例は34歳,男性,昭和59年7月,交通事故による多発外傷のため当院救急外来を受診し,外科にて腸間膜裂傷の手術を受けた.この際の心電図で前壁中隔梗塞が認められ,心エコーによる同部のasynergyと心筋逸脱酵素の上昇が認められた.事故後1カ月目の左冠動脈造影で,segment6に動脈瘤様変化が認められ,その直前直後は50%程度の狭窄を伴っていた.また,segment 7にはスリット状陰影が認められた.事故後7カ月目の造影ではsegment 6の動脈瘤様所見は消失し,25%未満の狭窄と壁の不整を認めるのみとなった.なお,1カ月目,7カ月目の左室造影ではsegment 2にakinesis, segment 3にhypokinesisを認めている.以上より本例は,外傷性の冠動脈瘤とこれに起因した冠動脈閉塞による前壁中隔梗塞の可能性が高いと考えられた.非穿通性胸部外傷に起因する冠動脈瘤および急性心筋梗塞は極めてまれで数例の外国文献をみるのみであり,ここに報告した.
  • 寒川 昌信, 沢山 俊民, 鼠尾 祥三, 長谷川 浩一, 原田 頼続, 三谷 一裕, 和田 佳文, 藤原 武, 中村 節, 忠岡 信一郎
    1986 年 18 巻 12 号 p. 1454-1461
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    持続性ST上昇を示す肥大型心筋症(HCM)2例を経験した.
    症例1は62歳の男性で胸痛を主訴に来院,心電図で陰性T波を伴うドーム状ST上昇がみられたため急性心筋梗塞と診断されていた.しかし,心電図経過や左室冠動脈造影・201T1心筋シンチグラム・心筋生検所見からHCMと考えられた.症例2は54歳の男性で,左室高電位と巨大陰性T波を伴う非閉塞性HCMであったが5年後巨大陰性T波は消失し,側壁領域でR波が減高しsmall Q波とST上昇が出現した.
    STの上昇は2例とも1年以上持続したが,左室壁運動異常(心室瘤を含む)や貫壁性心筋障害を示唆する所見はみられず持続性ST上昇のメカニズムは明らかでなかった.しかし症例1では陰性T波を伴ってドーム状ST上昇がみられたことより虚血性心疾患との鑑別が重要と考えられた.一方経過中R波が減高し,Q波やST上昇が出現し心筋病変の進行・臨床像の悪化がみられるHCM例の報告があるため,症例2は今後臨床像の推移を観察する上で重要と考えられた.
  • 藤本 俊典, 浜中 正明, 河島 祥彦, 小金井 彰, 韓 在哲, 川口 精司, 雨宮 武彦
    1986 年 18 巻 12 号 p. 1462-1467
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は52歳男性.指尖部皮膚硬化,レイノー現象,多発関節痛を認め,血清学的に抗ENA抗体陽性,RNase感受性抗体40,960倍陽性,RNase抵抗性抗体陰性であり,MCTDの診断のもと経過観察を続けていたが,経過中急速に呼吸困難が出現するようになった.この間,胸部X線上肺線維症を認めず,右心カテーテル検査では,肺動脈圧67/20(36)mmHg,全肺血管抵抗1,346 dyne・sec/cm5と上昇し,開存した卵円孔を通しての右→左シャントが確認された.
    低酸素血症の増悪により死亡したが,剖検により,弾性型肺動脈のアテローム硬化,肺筋型小動脈には,肺高血圧症に対する細小動脈硬化性病変が確認された.しかし,肺間質には胞隔炎・線維化の所見は明らかではなかった.
    肺高血圧症はMCTDの重要な合併症の1つと考えられ,その肺血管病変は,肺間質病変と相関せず進展するものと考えられた.
  • 大沢 浩, 中村 元行, 小野寺 龍彦, 武田 真, 土井尻 健一, 肥田 敏比古, 加藤 政孝, 瀬川 裕
    1986 年 18 巻 12 号 p. 1468-1472
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    左心室から右心房へ直接短絡を有する左室右房交通症を経験したので報告した.
    症例は55歳女性で小学1年の頃より心雑音を指摘されたが,自覚症状がないので放置していた.55歳時にUCGにて心室中隔欠損症および中隔瘤が疑われ,心精査を目的に当科を紹介された.左室造影所見よりI型の左室右房交通症および右房内に広がる後方型の膜様部中隔瘤の合併と診断した.左室右房交通症および中隔瘤の自然歴はいまだに明らかではないが,本症では生下時に存在していた膜様部中隔の欠損が生後中隔がなおも発育し続ける過程で高い左室圧を受け,左室右房交通口を有する中隔瘤を形成したものと考えた.本症例では自覚症状がほとんどなく,心機能が良好に保たれていることより手術を施行せずに内科的に経過をおっている.
  • 藤巻 わかえ, 竹村 尚子, 田原 佳子, 多田羅 勝義, 伊藤 けい子, 李 慶英, 木口 博之, 草川 三治, 伊川 あけみ, 鳥井 晋 ...
    1986 年 18 巻 12 号 p. 1473-1477
    発行日: 1986/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    原発性心臓腫瘍は,非常にまれな疾患である.最近われわれは,学童心臓病検診がきっかけとなって無症状のうちに右室内心臓腫瘍が発見され,外科的に摘除しえた症例を経験したのでここに報告する.
    本症例は14歳になる生来健康な女子で,中学3年生の時の学校検診で心雑音を指摘され,当科を受診した.超音波心断層法にて右室内心臓腫瘍が疑われ,さらに心臓カテーテル検査を行ったところ,右室流出路に小鶏卵大の腫瘍を認め右室圧が上昇していた.自覚症状はまったくなかったが,放置すれば突然死の危険もあるため,外科的に摘除した.組織学的には粘液腫であった.術後の経過は順調である.
    原発性心臓腫瘍の中では粘液腫は比較的多くみられるが,右室に発生するものはまれである.過去の報告と本症例をまとめ,検討した.
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