1986 年 18 巻 6 号 p. 663-668
症例は,1歳1カ月時に当院で根治手術が行われた総肺静脈還流異常症(TAPVC)心臓型(Darling分類IIb)の男児で,術後6カ月,肺静脈還流障害(pulmonary venous obstruction,PVO)による肺うっ血,心不全のため再手術が行われた.
PVOは,左右肺静脈の流入する共通洞と左房間に作製した交通路の狭小化によるもので,共通洞左房間の隔壁切除部の瘢痕形成,収縮および心房中隔形成に用いた心膜パッチの肥厚,縮小などが原因と思われた.再手術では,この狭小化した交通路の拡大と,expanded polytetrafluoroethylene(EPTFE)膜による心房中隔形成を行った.
術後経過は良好で,術後肺動脈造影でも左右肺静脈から左房への還流は良好であった.
TAPVC心臓型(Darling分類II b)の術後PVOに対し再手術を行った症例を経験し,若干の文献的考察を加え報告した.