心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
研究 Tocainideにおける電気生理学的および血行力学的効果の検討
久保 一郎平尾 見三諸井 幸夫鈴木 文男佐竹 修太郎比江嶋 一昌
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 19 巻 5 号 p. 537-546

詳細
抄録

新しい抗不整脈薬tocainideの,ヒト刺激伝導系および血行動態に及ぼす影響,薬物血中動態について検討した.対象は24例(男性20例,女性4例).投与量は,400mg,0.5mg/kg/分,0.75mg/kg/分の3群に分類した.電気生理学的検査では,安静時洞周期,PA,AH,HV時間および心房筋,房室結節,心室筋の各有効不応期は有意な変化を認めなかったが,心房頻回刺激時に,3例にてHV時間の延長を認めた.室房伝導は抑制される傾向を示し,心室早期刺激時には,5例にてV2H2'延長またはV2H2'ブロックを認めた.また,1例では,tocainide静注にて,逆伝導ブロック部位が房室結節からHis-Purkinje系へと変化したと考えられた
Tocainideは,正伝導,逆伝導ともHis-Purkinje系における伝導抑制効果を示すが,逆伝導において強いと思われた.
血行力学的には,大動脈圧,肺動脈圧,全身血管抵抗の上昇を認めた.肺血管抵抗,心拍出量,肺動脈懊入圧は変化を示さなかった.
薬物血中濃度は,3群とも投与直後にピークに達し,O.5mg/kg/分および0.75mg/kg/分投与量にて約1時間有効血中濃度が維持された.
投与例の38%に,静注後一過性に口腔内冷感を認めた.血圧低下を1例に認めたが,血中濃度と相関はなかった.

著者関連情報
© 公益財団法人 日本心臓財団
次の記事
feedback
Top