心臓
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研究 複数副刺激伝導路症例の外科治療上の問題点
三崎 拓郎岩 喬向井 恵一品川 誠坪田 誠松永 康弘
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1987 年 19 巻 5 号 p. 547-558

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抄録

複数副刺激伝導路症例の手術成績を述べ,問題点を検討した.2本とも通常の房室副刺激伝導路であった24例を対象とした.術前副刺激伝導路部位診断に引き続き,手術は胸骨正中切開で心臓に達し心表面マッピングを行った後に,右側に対しては心拍動下,左側に対してはcardioplegia使用,大動脈遮断下に心内膜から副刺激伝導路切断を行った.
この結果,副刺激伝導路が2本とも右側に存在した6例では,初期の3例は知識不足から術後デルタ波が出現し根治に再手術を必要としたが,他の3例では一期的根治に成功した.また2本が左右に存在した18例では,12例が一期的根治に成功し,6例が片方の副刺激伝導が残存し,4例で再手術を要した.
問題点と対策は1)9、8%と高率に存在するため,手術する際は常に複数症例を念頭におく.術中は種々の影響を受けるため術前検査は重要である.2)右側の副刺激伝導路に対しては心拍動下に心電図をモニターしながら切離を進めることにより,互いに近接した2本の切断も可能である.3)左側に対しては心停止下で行うため,広い切離が必要である.4)両側の副刺激伝導路に対しては,右側を切離後,再度マッピングし左側を切離する.5)両側にあり後中隔を挾んで近接し,しかも片方が間歌型あるいは潜在型である場合は一方を見落とすため注意を要する.

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