1987 年 19 巻 5 号 p. 622-627
抄録悪性リンパ腫の心臓への転移は比較的少なく,心嚢液貯留が合併する頻度は2~14.8%で,多くは末期に発現し予後不良の徴候とされている.今回我々は,表在リンパ節の腫大がみられない時期に著明な心嚢液貯留で発症し,その診断過程において核医学検査法が有用であった非Hodgkinリンパ腫の2例を経験した.2例とも上気道炎様症状,炎症所見および著明な心嚢液貯留のため"急性心膜炎"が最も疑われ入院した.67Ga-citrateシンチグラフィを施行したところ,いずれも右房部から大血管にそって著明な集積と心膜腔にも軽度の集積を呈した.なお,他部位に異常集積像はなかった.さらに胸部CTでは,67Ga-citrateの異常集積部位に一致して低吸収値の境界不明瞭な腫瘤像を認めた.そこで心嚢液貯留の病因確定と心膜腔の減圧を目的として心嚢液ドレナージを施行した.その際採取した心嚢液の細胞診あるいは縦隔リンパ節の生検により非Hodgkinリンパ腫と診断した.以上より,炎症所見と著明な心嚢液貯留以外異常所見を認めない場合でも,67Ga-citrateシンチグラフィ,CTなどによる非侵襲的検索は本症の診断上有用であると思われた.